すずき

冬の光のすずきのレビュー・感想・評価

冬の光(1962年製作の映画)
3.0
トマス神父は、かつて妻を失った経験から、信仰心に揺らぎを感じていた。
教師のマルタはそんな彼を愛していたが、トマスは連れないそぶり。
ある日、トマス神父は漁師のヨナスが鬱で塞ぎ込んでいる、と相談を受ける…

イングマール・ベルイマン監督の、「神の沈黙」をテーマにした3部作のひとつ。
モロに宗教的テーマを描いた作品で、非キリスト教徒の私にはちと難解だった。
ストーリーも大筋を追えば数行で語れる内容だが、途中の会話に宗教哲学的な命題が語られ、よく咀嚼しないとその味の深みに辿り着けない作品。

神の沈黙と不在を描き、宗教は人を救わない、という(キリスト教的には)衝撃的な内容。
だが確かに神は人を救わないが、「何か」を信じる事が人を救う場合もある。
その信じる「何か」は神や宗教だけじゃなくて、人でも愛でもモノでもコトでもいいのだ。
何のために生まれて、何をして生きるのか、答えられないなんてそんなのは嫌だ。
今を生きる為の支えとなる柱は人それぞれで、それを自分で見つけなくてはいけない。

主人公のトマス神父は信仰だけでなく、他人への愛情を失った男。
だが、ラストにはたった1人の為に礼拝を行った。
完全に捨て去ったわけではなかった彼の信仰あるいは愛情が、やがて事態を好転させるのではないか。
そんな真冬の寒空に差す一筋の光を捉えた所で、映画は終わる。
「野いちご」もそうだったけど、主人公の救いをしっかり描くのではなく、その前段階のこれから良くなるんじゃないか、という予感だけを示して映画が終わるのが素敵。