冬の光の作品情報・感想・評価

「冬の光」に投稿された感想・評価

悠

悠の感想・評価

3.6
神の沈黙をテーマにした三部作の二作目。
ベルイマン作品を観るのはこれで六作目ですが毎度思うことはこの人の映画は簡潔で短いのに観終わった後ずっしりと心にのしかかってくるものがあるということ。英エンパイア誌発表の「落ち込む映画」ランキング8位になっている作品だけあって本作は特にその傾向が強い。
主人公は妻に先立たれた牧師。ある日信者の女性から相談を持ちかけられ、聞いてみれば夫がずいぶん塞ぎこんでいるので話を聞いてやってほしいという。夫の相談に乗る牧師ですが妻に先立たれたことなど自分の身の上話をしているうちにあろうことか牧師でありながら「神はいない」との問題発言。その後その夫がとった行動は……。
というなんとも厭な始まり方。まず思ったのがポール・シュレイダーの『魂のゆくえ』にめちゃくちゃそっくり。あの映画とこの映画の関連性に触れている記事は一件しか見つからなかったですが『魂のゆくえ』は100%この映画を意識して作ってあると断言できるレベル。そしてこの始まり方に加えて僕が特に厭だなと感じたのは邦題にもなっている冬の光。光は善で闇は悪という普遍的なイメージがありますがそれに反してこういう暗い話をしている時に教会という小さな閉鎖環境に冬の窓から差す光というのがこんなにも厭なものなのかと。明るくて厭な映画と言えば『ミッドサマー』ですが、監督のアリアスターは「ベルイマンのような映画を撮りたい」と言っているほどのベルイマン信者であり、『ミッドサマー』にも「イングマール」という明らかにベルイマンを意識したキャラクターを登場させているところやスウェーデンが舞台という点からあの映画の厭な明るさのアイデアはもしかしたらこの映画からきているのかもしれない。
ともかくのっけから厭な始まり方をするこの映画は前作よりももっとドストレートに「神の沈黙」を表現した映画でした。『エクソシスト』をオールタイムベストにあげる僕はカラス神父よろしく聖職者の信仰の揺らぎを表現した映画が大好物ですが(マックス・フォン・シドーも出てるし)この映画の牧師は信仰の揺らぎというよりもすでに最初から信仰を無くしている様子。作中「親に聖職者になれと言われた」と言う牧師は職業として敬虔なふりをしており、そしておそらく無理にでも信仰心を持とうとしているわけですが妻の死去によってその張りぼての信仰心でさえもなくしてしまったのでしょう。言ってしまえば妻に先立たれた不信心な牧師が前を向けずに過去を引きずっている様を撮った映画ですがただの鬱々とした映画というわけではなく信仰と愛についてやイエスの本当の受難とはなんだったのかなどについてかなり考えさせられる内容の良作でした。
 久しぶりのベルイマン

「神の沈黙」をテーマにある牧師の葛藤と信心、疑念について説いた映画。

お馴染みのグンナールビョルンストランドとマックスフォンシドーで、核開発に怯えた自殺願望のある男に牧師が説教するが、自殺してしまう。そこから牧師は自分自身の堕落さと神への信仰を疑問視していく。

美しいスウェーデンの情景の中で写し出される人々の乾いた人生。カメラワークも照明も素晴らしい。
ウディアレンの「アニーホール」のもとになったようなショットもありました。

81分の短い上映時間ではテーマを語り尽くせていない感じがしていました。
「神の沈黙」を描いた作品はたくさんあるので観ていきたい。
意味を持たない形式だけになった教会。
ただそこにあるだけのモノとしての教会。ラストはうわぁとなる。

空咳と起毛のジャケット、あったかい飲み物。あの空気が伝わってくる。体感したことがたるあの空気。
いち麦

いち麦の感想・評価

3.0
愛と信仰の糾うが如き相互関係。冒頭、教会で会する登場人物たち全てが実は神の沈黙を知る。キリストの話に至るまで人は信仰で救われぬ生きられぬことを叩きつける容赦なさ。愛する牧師にキスをする女教師の姿が何とも愛おしかった。
牧師の息子として生を受けながら映画監督という全く別の道を選択したベルイマン。
彼自身の生涯のテーマとも言える神の不在。
沈黙を続ける神に対し我々人間は如何すれば良いのか。
さて、「神の沈黙」三部作の二作目に当たる本作(主題は共通するがそれぞれ独立した作品)。
自伝的要素も強く、監督自身お気に入りの作品だそう。
人間としての己の未熟さをまざまざと見せ付けられた気がしてならない。
彼が見た思想の高みにはまだまだ到達出来そうにもないが、観れば観る程にその深みに嵌る。
ベルイマンに限界などあるのだろうか。
R

Rの感想・評価

4.0
「イングマール・ベルイマン監督 ≪神の沈黙≫三部作 ~その2~」と位置付けられている『冬の光』は、これまたベルイマン監督の傑作のひとつ。

この映画の原題は『聖餐式出席者たち』であるが、ベルイマンが「この作品で最も苦労したのは光線の扱い方だ」と話しているように、邦題の『冬の光』は非常に良いタイトルであると思う。

冒頭と終盤で教会牧師の姿を見る印象が、崇高感から俗世的にガラリと一変してしまうのは、途中の物語を知る/知らないの違いからだが、牧師自身が「神を信じていない」というのを見てしまうと牧師を見る目も変わってしまう。

このあたりが、この映画が「教会での物語」→「教会の外の物語」→「教会」について上手く描写して上手く語っている証明ではなかろうか。素晴らしきベルイマンの手腕。

教会の牧師室で、牧師トーマス(グンナル・ビョーンストランド)に向って彼を慕うマッタ(イングリッド・チューリン)が、「どうしたの?トーマス」と尋ねるとトーマスは「神の沈黙だ」と応えるがマッタは「神の沈黙なんてバカバカしい。もともと神なんて居やしないのに…」という件では、マッタが神の不在を主張しているように見える。

マッタがトーマスに宛てた告白手紙を、トーマスが読むシーンでは、「トーマスが手紙を読む場面」→「マッタが正面向いて手紙内容を語る場面」→「手紙内容が過去の出来事(包帯を外す件)に至っては、更に過去の映像」となるあたりの「入れ子的な構造」が面白い。

キリが無く素晴らしい物語・映像で構成されたイングマール・ベルイマン監督の傑作である。
daichi

daichiの感想・評価

4.5
今まで観たベルイマン作品の中でもかなりシンプルな構成だった。神を信仰する理由、人を愛する理由、答えのない問いをしばらく考えてしまう。
Kir

Kirの感想・評価

4.0

このレビューはネタバレを含みます

牧師の話✝️

監督がより優れている点は、その人間観察力とそれを物語に落とし込められる描写力でしょう。

神の存在を伝道する者が、神の沈黙を嘆く。

キリストですらも、神の教えの通りに愛した人々に裏切られ、死に際にはその沈黙を嘆いたという。

それならば、なぜ神を信仰するのか?愛とは?

それらに対する一つの答えを見せてくれる、素晴らしい作品だと思います。


でも 愛し合うことだけが どうしてもやめられない 

プラネテスより
ヨウ

ヨウの感想・評価

4.3
敬虔な牧師として命を捧げていたのにそれが無意味だと悟りを開く残酷さよ。建前では偉大なる聖者として振る舞っても本音では形骸化する自らの営為に苦しめられる。「神の沈黙」なるものをこのような形で描き出し真理を突きつけるベルイマンに憎しみすら抱く人だっているんじゃないか。最愛の人を失い生きながら死んでゆく主人公の空虚な表情が得も言われぬ後味を残す。永久に宿命に囚われ続けることを予感させるラストはズルい。割とシンプルな内容である筈なのに何故ここまで強烈なインパクトを感じるのだろうか。迫り寄る厳粛な空気感に絶句する他あるまい。亡き妻の告解や死体を運ぶ場面など映画史的にみても凄まじいシークエンスが満載だ。
落伍者

落伍者の感想・評価

3.0
よく今まで牧師やってこれたなと思わざるを得ない生きるの下手そうな主人公。信じるものを失った男と信じるに値しない宗教。
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