どなべ

冬の光のどなべのレビュー・感想・評価

冬の光(1962年製作の映画)
5.0
本当に無駄なシーンが一コマもない
鼻をかむとか咳をする、生理的な人間の行為が丁寧に描写されていて、他の映画とは違う本物の人間がいて安心する

女は牧師を愛するが、死んだ妻の代わりにはなれない
牧師は自らの神への不誠実に悩むが、形而上学的な存在、神、思考をどうしても信じられない
ここまでは(ニーチェ流、神は死んだという意味での)実存主義に思えたし、(当時の)現代的な病を上手に表すなあと思った
もちろんヨナスも、牧師と同じ"現代の"深い悩みを持っていた

しかしラスト10分で鐘つき男が重要なヒントを牧師に与えたのがこの映画の非凡なところ、180度彼の考えは変わったと思う
彼は妻を亡くしたことに苦しんでいたのではなく、妻が自分を裏切っていたことで苦しんでいたことに気づき、いまもう一度、目の前の誠実な女性と神を信じる(ということかな?)
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