三四郎

輪舞の三四郎のレビュー・感想・評価

輪舞(1950年製作の映画)
4.8
冒頭からなんとも粋!狂言廻しのアントンが優雅な足取りで、この映画の舞台が1900年のウィーンであることを観客に語る!
名人上手の至芸ここにあり!
シルクハット、燕尾服マント、ステッキ、そして歌い始める!メロディも素敵だが、歌も心地良い。

私は過去が好きです
現代よりも安らかで 未来よりは確実です
陽がさしてきました 春です
恋にはうってつけの季節です
ワルツが聞こえてきました
恋の輪舞の始まりです


ワルツは巡る宴も巡る
そして愛の回転木馬も
巡る巡る私の役柄も巡る

愛は突然やって来てはかなく過ぎる
そして誰しもが同じ愛の調べを踊る


ウィーン舞台のアルトゥール・シュニッツラーの戯曲『輪舞』をフランス語で鑑賞するのはなかなかどうしておもしろい。ウィーン訛りのドイツ語よりもフランス語で演じた方がさらに艶っぽくなっているのではないかと勝手に想像してしまう。

内容は、娼婦と兵卒、次はその兵卒と女中、女中と青年、青年と人妻、人妻と夫、夫と軽薄娘、軽薄娘と詩人、詩人と女優、女優と伯爵…と、相手が順繰りに入れ替わってゆき、最終的に伯爵と最初に出てきた娼婦との組み合わせになって『輪舞』が完成する!

人妻ダニエル・ダリューの話が一番良い。
スタンダールの『恋愛論』を語り、情事が上手くいかなかった自分を慰める青年、それに優しく耳を傾ける人妻ダリュー、なんとも甘美だ。
「さっきの騎兵隊の将校の一人が、ずっと追い求めてきた女性とのある出来事を話すんだ(略)
とにかくその将校と愛する女性は三晩一緒に…過ごして……泣いたって」「泣いたの?二人とも?」「一緒にいられることの喜びの涙さ。わかるかい?恋をしたら誰でもそうなるんだ」
しかし、青年よりも女性は現実的で冷静で大人だった。

アントン、本当に憧れる。ドイツ語、フランス語、英語どれも流暢に喋れて、かつ演技も素晴らしくて、カッコ良すぎる!
女優役を演じたイザ・ミランダは、マレーネ・ディートリッヒを美人に寄せた感じのように思えた。
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