デニロ

三つ首塔のデニロのレビュー・感想・評価

三つ首塔(1956年製作の映画)
3.0
金田一耕助の容貌といえば、ふけだらけのボサボサ頭、絣の着物、羽織、袴姿なのだが、本作の主演千恵蔵御大はピストルを携えダブルのスーツを着込んで美人秘書と行動を共にする。恰幅の良い5頭身で動きはスムースとは言えない。本作では何と僧侶に変装しているのだが、観てすぐにそれと判るのでネタバレにもなりません。当時御大は『多羅尾伴内』シリーズで七つの顔を演じていたので観客には違和感はなかったのでしょう。きっと。

サクラメントで亡くなった日本人の男が遺した300万ドルの相続に関する血みどろの修羅場。相続人に指名されたのは深窓の令嬢の如くに育てられた中原ひとみ。その男は、母方の祖父の兄弟云々で会ったこともない人物。相続に当たって、①第1の相続人は指定された者と結婚すべし、と条件が付けられる。そして、②第1の相続人が結婚できない場合は、第1の相続人が二分の一、残りを親族の6名で均等に分配する、とし、誰かが欠けた場合はその分は残ったもので分配する、こととなるのだが、へ、もっと欲しいと欲深く人殺しなんてするんだろうか。

まあよい。

途中、深窓の令嬢は謎の男にさらわれるのだが、次に登場する場面ではその男の腕にしっかり与寄り添っている。なかなかにエロい想像をさせてくれる場面ではないか。そのエロは中原ひとみの養父の彼女に対する邪な感情をも増幅させる。ふふふ。物語は美しく増幅させねばなりません。それが観客の義務です。

1956年製作公開。原作横溝正史。脚色比佐芳武。監督小林恒夫 、小沢茂弘。

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