デニロ

毒娘のデニロのレビュー・感想・評価

毒娘(2024年製作の映画)
1.5
『毒親』という韓国映画も公開されているようで。

佐津川愛美が出演しているので観に出掛けたのですが、冒頭の空家の全景と音楽で、これホラーじゃないかと、気持ちが蹲ってしまった。高校生らしい男子女子がその空家に入ってじゃらじゃじゃらしながら男子が目的達成しようとすると、背後に何やら人の気配が、と女子が怯えると、チョキチョキと大バサミを持った何者かが襲い掛かる。・・・観に来るんじゃなかった。

そんな前段が終わると、佐津川愛美が心細げに登場します。どうやら先の家に引っ越してきたようです。おそらく冒頭の高校生の惨劇以前の話でしょうか。荷ほどきを高校生くらいの娘さんとしております。佐津川愛美は、自分の荷物でしょうか袋から何かを取り出し、暫し見つめているのですが、いやいやと、仕舞いこみます。何かを断念したのでしょう。娘さんからはママさんなんて呼ばれていて少し距離があるようです。娘さんは右手に黒い手袋をはめております。思わせぶりです。そんなふたりの語り合いのリビングの先にある庭先に赤い物を纏った人影がチラリチラリと。・・・来るんじゃなかった。

その晩、夕餉の席にはお殿様がいらっしゃって、佐津川愛美の手料理に舌鼓を鳴らし続けています。荷ほどき任せちゃってごめんね、等と妻と子を労いながら。話からすると、その娘さんはお殿様の連れ子の様です。あ、その前に娘さんの黒い手袋の謎が分かります。数年前、娘さんの母親がワイン片手に酔っぱらって火事を起こしちゃって、その火でやけどしちゃったらしいんです。

そんなことがあったとしても、その娘さんはお母さんが大好きで今でもふたりで写っている写真を愛おしく見ているのです。佐津川愛美もその事件のことをネットで知っていて、その事件の再現映像をジッと見つめてもの思うのです。

佐津川愛美に過剰とも思えるほどに気を使ってはいるお殿さまですか、かなり強引なところもありまして、もうそろそろいいんじゃないか、でもまだ、と言い淀む佐津川愛美に、俺の子を産めや!とやさしく迫ります。この日とこの日にしようなどと勝手に計画を立てて舞い上がっております。そして計画通り床を共にして受胎、大喜び。ある日、産科医で診断を受けていると娘さんから、今すぐケーキ三個とコーラ買って来て!と悲痛な電話かかかる。え、何事、とケーキを抱えて帰ると、リビングはメチャクチャで娘が赤い服を着たパンク少女に組み敷かれて喉元に大バサミを突き付けられています。ケーキ買って来たか。ケーキを食い散らかしながら、コーラを飲み下し、またね~、とコーラのペットボトルをゆかにシュルシュルと滑らせて去って行きます。お殿様が帰宅後に、警察に届け出ようかと思ってると話してみると、やめておきなさい、と窘められる。

赤い服着たパンク少女が二度目に現れたのは、引っ越し祝いのホームパーティをしている最中です。パーティを滅茶苦茶にして去って行ったのです。お殿様が呆然としている間に、佐津川愛美は警察を呼んでしまったのですが、やってきた八王子警察の刑事はなんとパンク少女の両親を連れて来たのです。よくこんなことをしでかしているみたいで、両親は土下座して謝ってますが、そんなもの野放しにしておくんじゃないよと、わたしはそう思います。この赤い服着た女の子はちーちゃんというらしい。その家に執着してよく来ては暴れまわるらしい少女なのです。で、何でその一家がその家を離れたのかというと、ちーちゃんが同級生を失明させるという事件を起こしたから、その家にいられなくなったというお話。

その時、ちーちゃんの父親の方が唐突にトイレを貸してください、場所は判ってます、などと言って入り込み、母親が意味ありげな表情をしているんですが、その後この両親は一切出てきません。あのパフォーマンスはなんだったのでしょうか。謎です。同じ時、その家の娘さん/萌花はちーちゃんにパンクの洗礼を受けたのですが、ちーちゃんが去った後に天井の小さな瑕をじっと見つめます。なんだろうと思うじゃありませんか、でもその後、その天井の瑕の話題はありません。謎です。

そんなこんなでちーちゃんは実在の少女で、幽霊でも生霊でも改造人間でもありません。萌花も恐る恐る近づきつつ徐々に親しくなって、つるんでいきます。ちーちゃんと同じように服を赤く染めてインスタント食品を貪りワインを飲み干し、ああ、お母さんを偲んでいるのだなと、彼女のこころの空白を知るのです。ちーちゃんもこころのさみしさが分かるので萌花に恋情のようなものを抱いて行ったのでしょうか。

萌花を心配する近所の高校ダンス女子がお家に遊びに来るとちーちゃんは堪えきれぬ感情が沸騰します。その高校ダンス女子に危害を加える計画を立てます。スズメバチを大量に捕まえて、ダンスの試演をしている高校ダンス女子に蜂蜜をぶっかけて、捉えていたスズメバチを解き放ち襲わせるなんて非道な真似を致します。

で、佐津川愛美は何をしているのかというと、暴虐性を露わにした夫との対決です。わたしお腹の子を堕ろします。/何故だ、ふたりで作ったんじゃないか。/違うわ、あなたが作ったのよ、堕ろすわ!!/って、おできを取り除くように簡単に。これも自己決定権何でしょうか。胎児の生きる権利との相克がない、なんて野暮なことは言いませんが、現代女性の台詞としては安易じゃございませんか。

等という不自然なエピソードの連続で、ってカテゴリーホラーですから当たり前田のクラッカーでしょう。

ラストシーンを観ながら、警察は暴行、傷害、殺人の犯人をいつまで放っておくんだろう、と思う。あの家の大家の無神経さも気になる。早く解体しなさいよ。

大バサミを振りかざすんなら『シザーハンズ』の様に、/どうして雪は降るの?/じゃあ、ハサミのことから話さなきゃね………、こうして雪が降るようになったのはね・・・・・・・/と血吹雪なんかじゃなくってひとひらの雪でも散らせて欲しいものです。また観たいな『シザーハンズ』。
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