1990年製作。原作ニコラス・ピレッジ。脚色ニコラス・ピレッジ、マーティン・スコセッシ。監督マーティン・スコセッシ。
映画館の惹句/大統領になるより、マフィアになることが憧れだった――
“グッドフェローズ”と呼ばれた大物マフィアたちの姿を、実在したあるアウトローの視点で描く。スコセッシ監督の軽快な演出と名優たちの演技に見惚れる傑作。/
マフィアの映画かと思っていたらブルックリンのチンピラみたいな男/レイ・リオッタの話だった。姿かたちは良くって大物ぶっているけれど、ずっと下っ端。一緒に組んでいる相手が悪すぎる。ロバート・デ・ニーロとジョー・ペシですもの。とはいってもそのふたりも大物マフィアという感じではありません。
ルフトハンザ航空600万ドル強奪というのが今一つ分からなくて。ケネディ国際空港の従業員が賭博で借金を抱え胴元のマフィアから、どないするんや、と恫喝されるも、マネジメントしているスーパースターも居ないから肩代わりさせられないし、ルフトハンザ航空の貨物にかくかくしかじかの金品が入るのでそれを奪って返す、という計画を話す。するとその話に乗ったデ・ニーロがボスになり実行に移したというものだった。その強奪大作戦は本作で描かれた通り何の支障もなく1時間ほどで貫徹。でも、実行犯の一人が逃走車両の処分をしなかったので、ひょんなことから足がついてしまう。分配した金は使うなという指示を守らぬ輩も出てきて。
デ・ニーロは警戒心、猜疑心が強くて、こういう質の悪い奴らがいるとこっちにも累が及ぶと次々に手に掛けて始末するのです。この辺り、本作の冒頭で描かれるデ・ニーロ、ジョー・ペシの敵対マフィア殺害にもその性格が表れています。車のトランクに押し込められていた男がまだ生きているといってジョー・ペシはナイフでメッタ刺しにするのですが、デ・ニーロはその後に念には念を入れて拳銃で数発の弾丸をぶち込むのです。で、ジョー・ペシのお母さんのところに行って飯を食います。
デ・ニーロの相棒/ジョー・ペシは瞬間湯沸かし器の如くで、ご機嫌で遊んでいるかと思うと、ふとした一言に逆上してしまうのです。先のトランク詰込みもその類いで、その時の殺しが後々自身の災厄として降りかかってしまいます。でもやることが恐ろしくて可笑しい。気の利かぬウェイターに、てめぇ踊りやがれと銃をぶっ放しているとそのウェイターの足に当たってしまいバツの悪そうな顔をするものの、次にそのウェイターが足に包帯をして仕事をしている時に居合わせると、そのウェイターの呪詛に反応して拳銃をぶっ放して殺してしまう。そんなジョー・ペシは働きを認められてマフィアの幹部になることが決まる。デ・ニーロは祝意を表するのですが、え、何でと思っていると、ジョー・ペシはイタリア系で、アイルランド系のデ・ニーロはイタリア系マフィアの幹部にはなれないということだった。が、その幹部就任は、ジョー・ペシをひとりにする策謀で、マフィアは、トランク詰込み殺人のことは丸っとお見通しだったわけです。仲間を殺す奴は許さない。
というようなふたりに挿まれたレイ・リオッタの独白が続くんですけれど退屈で、劇場の惹句に書かれた傑作とはとても思えない。音楽好きのスコセッシが随所に耳覚えのある楽曲を挟み込んでそれらが流れ出すと、ハッと姿勢を正す、それに誤魔化された感じの作品でした。
早稲田松竹 マーティン・スコセッシに花束を にて