ブラックユーモアホフマン

イリュージョニストのブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

イリュージョニスト(2010年製作の映画)
3.6
昔ながらの老マジシャン(実写で演じるならトム・ウィルキンソンかなー。フランス人じゃないけど)が巡業先のスコットランドで出会った少女と擬似親子みたいになる話。

字幕版で観たけど、明らかに字幕要らない!!セリフや文字情報に極力頼らずアニメーションだけで物語を語るストロングスタイルには好感が持てる。が、果たしてセリフに頼らず全てのニュアンスを伝えられるだけの表現ができているかというと…

ジャック・タチ作品は未だに一本も観られてないんだよなー。観なければなぁ、観なければなぁと思いながらなぁ。

5年くらい前に『老婦人とハト』を観て素晴らしかったので早く観たいと思っていた本作。やっとこさ観ました。

が、『老婦人とハト』の方が毒っ気があって好きだったなぁ。意地悪なユーモアも全くないとは言わないけれども、もっとそこ強くしてくれればよりお洒落な、大人な作品になったと思うのにな。

バンド・デシネがそのまま動いてるみたいなアニメーションの美しさは相変わらず素晴らしい。

ドラマに起伏が無いのであまり感動しない。演出や脚本のせいだと思う。

そもそも、マジシャンが少女に何故そこまでよくしてあげるのかの動機が明示されないのでノレない。どうして勝手についてきちゃった女の子にそこまでしてあげるのかずっと疑問に思ったまま話が進む。性善説過ぎる。現実にそういうことがあってもいいけど、フィクションの上では説得力に欠ける。1シーン、なんなら1カットでもいいのよ。何かあれば。

同じように少女は少女で何が目的なのか、何故マジシャンのことをそこまで信用したのか、分からない。だからこの奇妙な関係に説得力が全くない。故に全然引きこまれない。
少女はマジシャンのことを本物の魔法使いだと勘違いしている、のか?にしても、そういう描写は特にないので分からない。

ピクサー映画を想起する場面が多くあった。まあマジシャンの話なので『マジシャン・プレスト』みたいだな、フランス映画なので『レミーのおいしいレストラン』っぽいな、車で困るくだりは『マイクとサリーの新車でGO!』だ、とか。

シルヴァン・ショメよ、一回ピクサーで演出と脚本を学んでくれ。まあでも、ジャック・タチの脚本ってことで力んじゃったのかなぁ。自分のやりたいようにやればよかったのに。

『ベルヴィル・ランデブー』もいずれ観ます。

【一番好きなシーン】
腹話術人形が……あそこが一番切なかったな。