シズヲ

カラマリ・ユニオンのシズヲのレビュー・感想・評価

カラマリ・ユニオン(1985年製作の映画)
3.8
15人の“フランク”による謎の同盟軍団、抑圧と貧困からの脱却を目指して理想の地エイラへと向かう。アキ・カウリスマキ監督の長編映画二作目であり、既に確立されているオフビートな作風の中に演出の試行錯誤が見え隠れする。マッティ・ペロンパーはやっぱり初期〜中期作の常連である。本作の骨子となる“下層階級の哀愁”と“シュールな男達の連帯集団”という要素、ここから『◯◯三部作』と『レニングラード・カウボーイズ』に分岐していくような趣がある。

いざ蓋を開けてみるとたいへんシュールな映画で、作中の内実がほぼ説明されずに有無を言わさぬまま話が進み続ける。カラマリ・ユニオンの個々のメンバーについての具体的な言及は殆ど無く(台詞の中で伺える程度)、なぜ彼らが全員“フランク”なのかも特に語られない。冒頭で彼らがどういう人間なのかは宣言されるが、そもそもなぜ同盟を組んでいるのかは謎である。それから物語は突拍子のないシークエンスの連続によって紡がれ、その狭間で半ばノワールじみた描写も交えながら“フランク”が次々に脱落していく。時には唐突に殺されるが、なぜ彼らが命を狙われているのかも説明ナシ。しかし映画はやっぱり有無を言わさずに進み続け、そこには不条理な笑いが介在する。

本作は登場人物達の描写を“目的”と“行動”に終始し、バックボーンを完膚なきまでに内面化させることで具体性のある説明が容赦なく省略されている。カラマリ・ユニオンの奇妙な佇まいも相俟ってナンセンスな趣が強く、そこにオフビートな作風も交わることで全編に渡りシュールなユーモアが漂い続けている。そんなムードの中でもモノクロの端正な映像やライティングなどによる画面構図の秀逸さが際立っており、絵的な充実感に溢れている。ヘンテコなのにビジュアルは不思議とクール。煽りのカメラワークやロングショット、劇中歌ではない劇伴の使用や唐突なMV風シーンなど、初期作ということもあり演出面の試行錯誤も感じられるのが興味深い。仲間に置き去りにされたフランクの一人がおもむろにスタンド・バイ・ミー歌い出すとこ好きすぎる。

そんなこんなでシュールな映画ではあるが、冒頭の台詞や作中の挙動からしてカラマリ・ユニオンが下層階級の集団であることは明白である。現状の閉塞感からの脱出を望んだ男達が都市の中で藻掻き、結局は抜け出せぬままに次々と退場していくという構図は半ば寓話的。映画はそんな彼らの放浪を飄々と見つめ続け、そこにユーモアと哀愁を内包させる。最後は“現状の社会からの脱却”へと向かっていくことも含めて、やはり根底にはカウリスマキらしいテーマが内在しているのが分かる。
シズヲ

シズヲ