しゅん

王と鳥のしゅんのレビュー・感想・評価

王と鳥(1980年製作の映画)
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高畑勲『漫画映画(アニメーション)の志 『やぶにらみの暴君』と『王と鳥』』は本作を観る上でめちゃ助けになるので是非読むといいと思う。作品成立の複雑さを知るだけで印象だいぶ変わる。

ギュイっと引くカメラの動きにグッとくる。鳥と犬の快活さとは真逆のロボットの緩慢な、それでいて壊滅的な破壊の動きが気になる。『パラサイト』を凌ぐ過剰な垂直性の中で、王だけでなく鳥も破壊の主となる。そのアイロニーと最後の寂しさ。勧善懲悪とラブストーリーを成立させたままここまでもの悲しく終わらせるのもすごい。戦争と破壊の主題を複雑なまま、愛らしいアニメーションの中で提示している。

「5月の歌」は名曲。「ロバと王様と私/明日はみんな死んでいる/ロバは飢えで、王様は鬱屈で、私は恋で」。ニコの歌のようなアンニュイなニュアンスと、リリックの絡み合いがすばらしい。レコード盤を意識したざらついた音質も最高。
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