Panierz

処女の泉のPanierzのレビュー・感想・評価

処女の泉(1960年製作の映画)
4.5
偶然によって導かれる必然性というものを強く感じる作品だった。

教会へ向かう道中で不幸に見舞われる一人娘のカーリンと、その復讐に走る父のテーレ。テーレは罪なき者の陵辱と殺害を看過する神を責めながらも、信仰心を捨てることはできず、神に罪の許しを乞う。すると娘の亡骸の下から泉が湧き出る。

ここに神の恵みを見ることもできるが、テーレは娘の亡骸の上に教会を建てると神に誓っていた。そこに泉が湧き出る。この神秘的な泉の美しさに一瞬惑わされるが、ここにはどうもすれ違いを感じてしまう。
いや実際にはここに人間と神のすれ違いも何もなく、偶然そこに寓話的に泉が湧いて出てきただけで、しかし祈った後の出来事なのでそこに神の恵みという意味を汲んでしまう。そうしないと、神を信仰する者としてこの現実に耐えることが出来ないから。

こうした偶然を必然と捉える、無意味に意味を付け加える。宗教に限らず、こうしたことは恐らく日常的に行われている。
人間には、物語というものが必要不可欠なのだと思わせられる。

キリスト教徒、異教徒、信仰のない(まだ芽生えていない)者という三項鼎立で信仰について問いながら、亡き処女の下から湧き上がる泉という象徴によって、信仰の美しさと虚しさを両義的に映し出すベルイマンはやっぱり偉大だと思いました。
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