Keigo

グラン・ブルー完全版 -デジタル・レストア・バージョン-のKeigoのレビュー・感想・評価

4.4
ベッソンさん三作品目。
出たぞ、やたらとバージョンがいろいろあるこのパターン。配信されているのは完全版のみだったのでこちらを。

『レオン』→『サブウェイ』と観た順番もあるのかもしれないけど、またずいぶんと毛並みの違う作品!でも全然嫌いじゃない。いや、むしろいい。全体的にものすごくいいムード。

粗野で陽気な人間味溢れるエンゾを演じたジャン・レノもさることながら、超人的な潜水能力を持ち海とは切っても切り離せない過去を抱えた主人公のジャック・マイヨールに、澄んだ瞳でどこか浮世離れした雰囲気を持ったジャン=マルク・バールがピッタリだった。そしてヒロインのジョアンナを演じたロザンナ・アークエットの溌剌とした活発な雰囲気もとてもチャーミングで魅力的だった。


陽光を照り返して輝く海面も、陽光がベールのように差し込む海中も、海を取り巻く環境も、とにかく美しく撮られている。そんな映像が続くとだんだん眺めているだけでは物足りなくなってきて、海辺のレストランで潮風を浴びながら海の幸のパスタを食べたくもなるし、着の身着のまま海に飛び込みたくなってウズウズしてくる。

でも海には命の源である生命のイメージと同時に、常に死の予感も漂っている。どんなに美しいと思っても、無意識下にある怖さは拭えない。だからこそ人間が海中に潜るシーンになると多かれ少なかれ緊張感を伴って息が詰まる。リュック・ベッソンはその緊張感をただショッキングでスリリングな場面を演出する装置のようにして扱うことはしなかった。かと言ってただただ美しいものとして捉えるでもなく、そこに静かに横たわる恐怖もしっかり伝わってきた。

海は、もっとずっと大きくて偉大なもの。
その眼差しに、彼の海に対する愛を見たような気がした。

ラストシーン良かったなー。
ああ、誰かと語りたくなる映画だ。
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