◆あらすじ◆
イングランドは独裁者アダム・サトラーにより支配されるようになり、自由が失われてしまった。TV局の職員であるイヴィーは夜に外出した際、秘密警察に暴行されるところを黒ずくめの仮面の男“V”に助けられるが、“V”はそのまま裁判所を爆破する。イヴィーは“V”の関係者として秘密警察に追われることになってしまう。
◆感想◆
独裁国家となったイングランドを舞台に、謎の仮面の男“V”が自由や正義を吹聴し、国家に対してテロ行為を続ける姿を描くとともに、“V”に巻き込まれたイヴィーが“V”の姿を見ていくうちに自身の本当に望む形を明らかにしていく様子が描かれており、“V”の存在感と謎の部分が魅力的で最後まで興味を持って楽しむことができました。
本作の世界観として、第三次世界大戦後、アメリカが崩壊してイングランドが極端な全体主義国家に変わっており、国家によって国民が抑圧される世界となって、鬱屈とした雰囲気が印象的でした。“V”の目的は定かでなくとも、国民全体に「自由」を求める地盤があり、それに“V”が上手く乗っかった形に見えました。
イヴィー(ナタリー・ポートマン)は国家に対して従順な一個人に過ぎませんでしたが、“V”に助けられたため、秘密警察に睨まれることになります。イヴィーは本作の中では“V”を災いと見ている部分が大きく、後半になるまでその姿勢は変わりません。“V”がなかなか本心を見せないことが原因かもしれません。
“V”(ヒューゴ・ウィーヴィング)は本作中、ずっと仮面をつけた謎の男として存在しており、彼の言い回しや動きが独特の丁寧さがあり、個性的でした。また、短刀を用いた戦闘の動きは軽やかで、相手を鮮やかにさばいていき、底のない強さを感じさせます。
本作は“V”の過去がストーリーの大きなカギとなっており、その部分を警察官のエリック・フィンチ警視(スティーヴン・レイ)が明らかにしていきます。エリックは体制側の人間でありながら、極めて中立的な姿勢の持ち主で、彼の行動を観ていくことで、“V”の目的が自然と見えてくるようになっていて分かりやすかったと思います。
本作の敵である独裁者アダム・サトラー(ジョン・ハート)は利己主義の塊のような存在として描かれており、自身の障害になるものには容赦なく排除していく冷酷さをもった悪党として描かれていました。しかし、ラストは案外、呆気なくて少し拍子抜けしました。
なかなか面白かったと思います。
鑑賞日:2023年12月12日
鑑賞方法:Amazon Prime Video