湯っ子

鬼龍院花子の生涯の湯っ子のレビュー・感想・評価

鬼龍院花子の生涯(1982年製作の映画)
4.0
CMで「なめたらいかんぜよ!」と啖呵を切る夏目雅子が印象深く、のちに鬼龍院花子が夏目雅子ではないと知り。実際観てみたら、夏目雅子でもなく鬼龍院花子でもなく、鬼政こと仲代達矢の映画だった。
鬼政は土佐ではいわゆる「泣く子も黙る」みたいな存在だが、本人は自身をヤクザではなく「侠客」と称しているらしい(興味のある人はwikiってみてね)。
この鬼政がとても興味深い人物で惹き込まれる。そうは言っても要するにヤクザなので、暴力とハッタリを武器に親分をつとめているのだけど、男の子が生まれないこともあるのか、「鬼龍院はわしの代一代きり」と割り切っている。だから、内部の後継者争いがなく、構成員もどこか和気あいあいな雰囲気。
子供を産まない本妻もその座を奪われることはなく、妾に産ませた実子の花子を盲目的に可愛がる。養子である松枝を、本人の望み通り女学校に通わせてやることにも何か父親らしい気持ちがみえる。
また、鬼政が鉄道会社のスト破りを依頼され押し入った先で、暴力に屈しない活動家田辺に惚れ込み労働運動支援を決意したり、それでいて田辺が松枝を嫁に欲しいと言えば激怒し指を詰めさせ、松枝を手篭めにしようともする。
ちなみに、このジャケットの松枝を演じる夏目雅子の色っぽい写真と「お父さんやめて!もうこれきりにして…」というコピーは、明らかにエロ目的のおっさんホイホイであり、そんなセリフもエピソードもないです。
鬼政が清濁併せ持つ複合的な人物なのに対して、松枝があまりにも聖女すぎないか?という気がして、ちょっと観てる間ムズムズした。なので啖呵を切るシーンにすごく期待したのだが、思ったより迫力を感じなかったのは残念。だけど、夏目雅子は幸薄く清らかで芯の強いヒロインがぴったりで、彼女をアイドル的に愛でるには格好の作品である。
脇を固める女優たちも豪華で、みんなあたりまえのように脱いでいて、あたりまえのように着物の裾をめくりあげて乱闘していて、ああこれが五社英雄監督らしさなんだろうなあと思う。面白かった!
湯っ子

湯っ子