くりふ

オルカのくりふのレビュー・感想・評価

オルカ(1977年製作の映画)
3.5
【海鳴りは“スパック”とは囁きません(笑)】

ツタヤ発掘良品で見つけ、懐かしのスパックロマンキター!と早速借りました。

子供時代、何の映画をみたの?と聞かれ「○が人を襲う映画」と答えていた頃の一本。確か有楽座でみました。単純な子供心に、相対主義というモヤモヤをより増やしてくれた、70年代ごくあく動物ランド殺伐味。

まず公開前、宣伝のペテンぶりがすごかった。このチラシ、持ってましたよ。

(前のサイトには、公開時のオモロイチラシ画像がありまして…ここでリンク貼ってました)

<スパック・ロマン>とは東宝東和の創作なり。しかし東宝の社長?だったかにも反対されたらしく姿を消し、公開時はスの字も見当たりませんでした。

『スター・ウォーズ』もこれで売ろうとしたんですよね。東宝東和詐欺史の一瞬を飾る打ち上げ花火。…おかげで妙な先入観植え付けられましたが。

しかしうん十年ぶりにみて…けっこうよくできていたね!と感心しました。水中撮影はしっかりしているし、実際にシャチに演技させている所も多く、CG麻痺が進む現代ではこれ新鮮。脚本家の兄弟が海洋学者だったとかで、シャチ生態のお勉強もそれなりにあります。

まあ、そもそもシャチをここまで擬人化したらお笑い紙一重ですけど。オイルの使い方なんてどこで覚えたんだ?鴨川シーワールドでバイトしてたんかシャチ? 擬人化をより抑え、もしやあり得るかも?と思わせる現実味がほしかった。

と、リチャード・ハリス演じるノーランの過去が掘り足りない。

アイルランドを出て16年って、ずっとニューファンドランド島で暮らしていたのか?地元漁師たちと接点ないわけは?アイリッシュでカナダでも疎外されたから?なぜシャチの生け捕りなんて始めたのか?…などが具体的に立ってくると、対決により求心力が出たはず。

ノーランが軽率なんですよね。彼がシャチと拮抗する男になっていたら、大傑作になったんじゃないかと思いました。

エンニオ・モリコーネの音楽が華麗に泣きを入れても、即物的な描写で壊しているのもまあ残念。脚本ルチアーノ・ヴィンチェンツォーニの影響か?これってマカロニのざっくり味でしょう。“10点満点前”のボー・デレク活造りギブス添えのシーンとか。ちょっとイタリアン・ホラーっぽいですね。

ハリス以下、役者さんの存在感はきっちり立っていますね。

シャーロット・ランプリングの「雪の女王」な美貌が、ラストシーンから逆算すればすごく嵌っています。人物としての立ち位置はハンパですが。

だから彼女の氷結美が作品をより殺伐とさせている面もあって。ノーランを暖めてあげようとするのに狙いが逆に見えたりもする(笑)。ラストの舞台がすごく良かっただけに、彼女はもっとHOTに生かしてほしかったなあ。

ちなみに上記チラシにもある、ウェットスーツ姿の彼女がナイフを構えるスチール。トリミングされていますが太もも以下は生足で、公開当時、子供心にもナニかを期待したものでしたが、本編には一切!登場しませんでした…(泣)。

そんなこんなで、よくできているけど、今の視点だとやっぱり惜しいなあ…という仕上がりでしたが、ニューファンドランド島から北の海に至るロケーションと、シャーロット美だけでも楽しめました。

また「最果ての映画」が好きなので、このラストシーンもかなり好きですね。

<2014.5.20記>
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