松本清張の同名小説を野村芳太郎監督が映画化。
殺人事件の共犯者の行方を追う２人の刑事が、東京から佐賀に赴き、容疑者の元恋人の張込みをするサスペンス映画。
脚色は橋本忍と山田洋次(ノンクレジット)。(1958)
真夏の暑い盛り、警視庁捜査第一課の2人の刑事、若い柚木(大木実)とベテランの下岡(宮口精二)が横浜駅から満員の夜行列車に乗り込み、九州の佐賀まで向かうシーンからスタート。
東京の深川で強盗殺人事件が発生し、主犯(内田良平)は捕まったが、共犯者石井(田村高広)が拳銃を持ったまま逃走していることがその後説明される。
主犯の証言によると、石井は、3年前上京する時に別れた昔の恋人で今は人妻になって子どももいる横川さだ子(高峰秀子)に会いたがっていたという。
２人の刑事は、身分を隠したまま、女の家の真向かいにある宿の2階の部屋を借り上げ、女の張込みを開始する…。
～他の登場人物～
・柚木の恋人・高倉弓子(高千穂ひづる）:貧しい家族の家計を支えている。柚木刑事と体の関係があるが、２人は結婚に踏み切れないでいる。
・弓子の父(藤原釜足)
・銭湯の娘・信子(川口のぶ):柚木刑事の縁談相手
・信子の母(北林谷栄)
・旅館の女主人(浦辺粂子)
・旅館の女中(小田木みき)
・旅館の女中(山本和子)
・佐賀署刑事(多々良純)
見どころは終盤、女が動き出してから。
20歳も年上のケチな銀行家から冷遇されている地味な印象の人妻から、温泉地で昔の恋人に再会して女性として輝き出す高峰秀子の演技。
そして、ラスト…。
恋人との関係が曖昧になっていた柚木刑事が、さだ子と犯人に次第に感情移入し、自分と重ね合わせて人情味を見せるあたりの日本的情緒。
