いろどり

10ミニッツ・オールダー 人生のメビウスのいろどりのレビュー・感想・評価

4.6
よくぞここまで鬼才、異才、奇才と呼ばれるタイプの巨匠を集めてくれた!
時をテーマに名監督たちが10分という制限のなかで、それぞれの個性を炸裂させる。

アキ・カウリスマキは安定の無表情オフビート。常連俳優が真顔で笑いを誘う。「過去のない男」とつながっている?見なければ! !

ヴィム・ヴェンダースも安定のロードムービー。これはかなり好きだった。トレスポ感あり。ヴェンダース映画を久しぶりに見たくなった。最高!!

ヴェルナー・ヘルツォークも安定の南米秘境部族もの。文明と過去を見つめる蒸し蒸しとした盗撮ドキュメンタリー。10分作品なのに20年後のインタビューがありぶっとび。文明を知る前と後で時の概念が変わる。「文明に取り残された」という表現は文明人のおごりでしかない。これは何度もみた。良作。

ジム・ジャームッシュも安定のモノクロオフビート。

スパイク・リーだけテイストが異なりゴアvsブッシュの大統領選の出来レースを描いた怒りのドキュメンタリーで完全社会派。

チェン・カイコーが飛び抜けて良かった。失われた過去を抱きしめるような哀愁たっぷりの作品だった。チェン・カイコーさすがだな。この作品大好き。

世界の巨匠作品はどれも素晴らしく、良かったかどうかはもはや好みの問題なのだけど、そんななかでヴィクトル・エリセは鳥肌ものの傑作だった。

たった10分とは思えない、赤ちゃん誕生の喜びや日々の営みのなかで忍び寄るナチスの足音、スペイン内戦の名残りを見事に表現している。あふれだす映像作家の才能。エリセ監督、本当に凄いな。この作品は繰り返し鑑賞した。

世界の名だたる巨匠の世界を一気に堪能できる映画好きには垂涎ものの映画だと思う。至福の時間だった。
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