残存意義
〈エヴァパイロット達は全ての使徒を倒した。しかし、サードインパクトを起こすべく ゼーレはネルフ本部に攻撃を仕掛ける。遂に人類補完計画が実行に移される中、シンジがエヴァを通して向き合ったのは───〉
TV放映版ベースの総集編「シト新生」に続く、"旧劇"と呼ばれた一つの区切り。Airの前半で打ち切るバージョンがあるなど、このあたりのリリース形態は少しややこしい。
TV版の終わり方はシンジの精神世界から彼の成長を描いたものだった。しかし今作は、それとは比べものにならない程に重たい外側のドラマ。2作の関係性についての説は色々あるが、シンジの選択で分岐した結末として見るのが堅いか。
グロや性表現も結構露骨になり、極限の心理状態に陥った登場人物の行動が目を引く。終盤は、途方も無い概念のアニメーション化に唖然。
シンジが今作では状況にただ流されるように見えるが、終盤のレイがあの選択を取った原因が 積み重なったシンジに対する感情であったことを考えると、結果的には彼がゼーレの野望を打ち砕いたと言える。こう考えると状況的にはハッピーエンドでもあるはずなのに、依然として欠落を抱えたままの主人公であり終始鬱屈とした作風とのギャップがクる。
そしてシンジが辿り着いた、もう一つの結末。自己完結の自己肯定はちっぽけなものでしかないが、諦観に満ちた世界のスタートラインではあったのだ。
"少年少女が大人になる"をテーマとしてSFドラマをこの熱量で描き尽くしたことに感無量。攻撃的かつ自虐的な本作を経ても尚、庵野秀明が『エヴァ』に再び向き合ったことの重みが理解できたと考えている。