弟二郎

夜の弟二郎のレビュー・感想・評価

(1961年製作の映画)
4.1
マストロヤンニしかも冒頭からヘリの飛行音。これは前々年フェリーニの「甘い生活」へのアントニオーニの回答だなと。そしてやはりフェリーニより器用にビジネスと付き合ってくぜって姿勢が見えたよな気がします。
そういやアントニオーニさん『さすらい』撮ったきっかけが突然嫁はんから逃げられた件だとかで、あの『さすらい』のラストを思うと、根底にあるのは生きてるだけで丸儲け感。大いに開き直った生命力のようなものを感じたりもし。
一方前作『情事』以降モニカヴィッティとできちゃってたとかで、あの初々しさも影を潜めた彼女になんというかボスの女的な緩みというか緊張感のなさが漂い。かつパーティ演出にはフェリーニほどのやんちゃさもなくグルーヴも生み出せないままで。
とはいえ序盤から静寂と環境音に時々台詞。話とか進まんのに緊張感あって飽きさせないしモニカヴィッティもラストカットが絶品だしそこから続く宴の終わりの描写が渋くてそこからまた言葉に頼りすぎたりもするにせよ概ねよかった。色がらみが残念すぎる。
なんかもうモニカヴィッティがロッセリーニにとってのバーグマン、フェリーニにとってのジュリエッタマシーナ、溝口さんにとっての田中絹代に思えてきて。しょうがねえなあおっさんたちと。これ以降足枷にならぬことを祈るばかりでございました。
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