ボブおじさん

U・ボートのボブおじさんのレビュー・感想・評価

U・ボート(1981年製作の映画)
4.1
およそエンターテイメント性とは掛け離れた重苦しい雰囲気。文字通りの閉塞感と息苦しさに溢れたドイツ制作の戦争映画の傑作。

1941年秋、ドイツ軍占領下にあったフランスの港町ラ・ロシェルの酒場。ドイツ兵たちで賑わう中に陸での最後の夜を楽しむドイツ潜水艦Uボートの乗組員たちがいた。

最年長の30歳である艦長をはじめ、乗組員たちは皆20代前半。初めてUボートに乗り込む報道部のヴェルナー中尉は22歳の若さだった。翌日の早朝U96は出発する。その行き先が地獄だとも知らずに。

公開当時鑑賞した劇場は決して狭くはなく、もちろん酸素だって十分にあったはずだ。だが、まるで深海の中、狭い艦内に閉じ込められた様な息苦しい状態が2時間以上続くこの映画は、終始重苦しくて息が詰まる様だった。

潜水艦という究極の密室の中、嵐に揺られ、環境に苛立ち、敵の攻撃に堪える。駆逐艦から逃れようと深く潜っても、そこには〝水圧〟という別の敵が待っている。躯体が軋み水圧でボルトが吹っ飛ぶ描写は、どんなホラー映画よりも怖かった。

水深280メートル、海水の侵入、バッテリーの不足、減り続ける酸素。この地獄の描写から果たして抜け出すことができるのか?結果を知っていても息苦しい。

苦闘の3ヶ月を耐えたU 96は、最後の力を振り絞って浮上する。地獄からの生還を果たした彼らの脳裏に浮かぶのは、家族か恋人か、それとも腹一杯の食事だろうか?

出発の地ラ・ロシェルに到着した彼らを待ち受けていたものは…


公開時に劇場で鑑賞した映画を録画DVDで再視聴。
それにしてもこの名作映画にジャケット写真が無いのはなぜ?