VHSにて鑑賞。
これが、カンピオンの長編デビュー作(ただしTV映画のようです。『スウィーティー』が長編映画デビュー作)とのことですが、意外にも硬派な社会的なメッセージを持った問題提起の要素が強い映画だったので、少し驚きました。
もともとは親友だった二人の少女が次第に違う道を歩いてゆくきっかけと経緯を時間をさかのぼって描くことにより描いていますが、感性が光るというより、大人の無責任さを告発している社会派映画に見えてしまうのは、狙ってのことで、宣伝の仕方が作品を無視していたのでしょうか?あるいは、技術的な未熟さ故に枠組みだけが残ってそのように見えてしまったのもしれません。そのへんは、かなり微妙なところのように見受けられました。
以前見た短編集にあったような、感性のきらめきとか芸術性の高い独自の視点というようなものは見当たらず、ただ思春期の子供を持つ家庭の実態をリアルに描いたという風にしか見えないのですが、社会派映画としてみた場合は、示唆にとんだ大変考えさせられる作品でした。
地球の反対側の国ですから、季節が日本とは逆だったり、制服を購入するのが学校に入学してからだったり、と細かい部分が新鮮です。そして、とくに面白かったのは、あり得ないくらい本音むきだしの親達の会話やあまりにリベラルすぎる親子関係のありかたでした。
どちらの母親も、娘の父親とは別居状態で、再婚していたり、母親のボーイフレンドがお泊まりしていったりもして、なんか、あれれ、な感じだったりもするのですが、よく見ると、ちゃんと学校に通い続けているルイーズの母親の方は、娘の生活に父親以外の男性が口を差し挟まないようにきっちりけじめを付けているんですね。
映画は、娘達の同級生と思われる女の子の通夜にルイーズの両親が訪れるところから始まるのですが、母親が再婚していることを除けば割と普通の家庭で育っているかに見えるケリーのほうはどうだったのか?
感受性が鋭く、学力にも恵まれた仲の良い二人の女友達の生き方がどこで分かれてしまったか、について、映像はシビアに映し出していました。冒頭でルイーズの父親が言っていた通り、本当にわずかの違いでどこに行くかが判らないのが思春期なのかもしれません。
ジェーン・カンピオンの映画としてみるとがっかりする可能性が高く、娯楽性も極めて低いですが、思春期の娘さんがいらっしゃる親御さんには見てなるほどと思う部分もあるかとおもいますので、機会があれば見る価値があるかもしれません。
視点が新鮮だったのでこのスコアですが、満足度としてはかなり甘めです。
(意外にも硬派な社会派映画 2010/12/23記)