はなたまご

エデンの東のはなたまごのレビュー・感想・評価

エデンの東(1954年製作の映画)
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 旧約聖書の逸話「カインとアベル」を土台とし、愛に飢えた若者の悲しみや疎外感を描いた作品。ジェームズ・ディーンが主役のキャルを演じ、彼はこの作品をきっかけにスターダムにのし上がった。
 「カインとアベル」は兄カインが弟アベルを殺し、神によってエデンの東・ノドの地へ行くよう言い渡されるという話だ。しかし、この映画には善人も悪人もおらず、キャルが神のように慕う父親もれっきとした善人とは言い切れない。そんな曖昧な世界で、ただ清く善い行いだけを求められる。不器用なりに愛を示してもそれは悪だと切り捨てられ、見向きもされない。「愛の反対は憎しみではなく無関心」という言葉があるが、まさにこの作品はそれを表していると思う。
 理想郷エデンと違い、ノドの地はさまよえる者の地だと言う。だが、キャルにとってそもそもエデンなど存在したのかどうか。実はこの世はどこを切り取っても善と悪に悩みさすらう者達の地、「エデンの東」なのかもしれない。