こなつ

17歳のカルテのこなつのレビュー・感想・評価

17歳のカルテ(1999年製作の映画)
3.8
1999年アメリカの作品。スザンナ・ケイセンの自伝「思春期病棟の少女たち」にウィノナ・ライダーが惚れ込み、自ら製作総指揮を務めたヒューマンドラマ。

ウィノナ・ライダーの吸い込まれそうな大きな瞳の美しさには驚くが、無名に近かったアンジェリーナ・ジョリーが自身初となる助演女優賞を受賞し、一躍彼女を有名にした作品としても知られている。

薬を大量に服用して自殺を図った17歳の少女スザンナ(ウィノナ・ライダー)は、境界性人格障害と診断され、精神病院に入院する。入院先の病棟で出会う様々な問題を抱えた同世代の女性たち。管理と束縛の厳しい生活の中、希望を見い出せずにいた彼女は、リーダー格のリサ(アンジェリーナ・ジョリー)と親しくなる。

ベトナム戦争の長期化や貧困・人種差別など深刻な問題を抱え、情勢が不安定だった60年代のアメリカを舞台に、様々な心の痛みに苦しみながらも健気に生き抜こうとしている同世代の女性たちと知り合い、交流を続けていくうちに、スザンナが少しずつ自立心を取り戻していく姿がとても丁寧に描かれている。

自身も境界性人格障害で精神科の入院歴があるウィノナ・ライダーと10代に鬱状態で死ぬことばかり考えていたというアンジェリーナ・ジョリーの共演だけあって、真に迫る演技が見もの。

一部映画は脚色されている部分があると言われているが、その人が人生を諦めない限り、人はどんな困難に直面しても何度でも生まれ変われる。そんなメッセージを感じた。

ペトゥラ・クラークの「恋のダウンタウン」が懐かしく耳に残る。



余談・・・

ウィノナ・ライダーがこの作品に出演した数年後の2001年にNYの高級デパートで大量の洋服を万引きして捕まったのは有名な話であるが、この作品の冒頭で、「お金があっても万引きする人がいる」という台詞があり、境界性人格障害の症状の一部を語っているとしたら、ウィノナ・ライダーもまた自らの病気が原因で万引きをしてしまったのか、、、
彼女は万引きしたブランドのマーク・ジェイコブの洋服を来て裁判に出廷していた。そんな彼女は2016年「マーク・ジェイコブ ビューティ」の広告キャンペーンに抜擢され、「ストレンジャー・シングス 未知の世界」で女優として完全復帰したウィノナが、2022年またもや50歳にしてマーク・ジェイコブのキャンペーンモデルに大抜擢された。何とも商魂逞しいマーク・ジェイコブであるが、色々なことがあっても立ち直れるし、生まれ変われるというこの作品「17歳のカルテ」を地で証明したウィノナ・ライダーが凄いと改めて思っている。
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