こなつ

ある天文学者の恋文のこなつのレビュー・感想・評価

ある天文学者の恋文(2016年製作の映画)
3.8
2016年劇場で鑑賞した作品を再鑑賞。「モリコーネ」のジュゼッペ・トルナトーレ監督作品。ウクライナ出身の女優オルガ・キュリレンコの「その女諜報員アレックス」を当時観たばかりだったが、数ヶ月後に公開されたこの作品では、アクション女優を封印したかのようなオルガ・キュリレンコの新たな魅力に触れ、しっとりとした雰囲気が強く印象に残っている。相変わらずダンディなロマンスグレーのジェレミー・アイアンズ演じる天文学者との秘密の恋の物語。イタリアのサスペンスロマン。

著名な天文学者エド(ジェレミー・アイアンズ)と彼の教え子エイミー(オルガ・キュリレンコ)は、親子ほど年が離れているというのに秘密の恋を謳歌していた。しかし突然エイミーは、エドの訃報を知る。現実を受け入れられないエイミーの元に、彼の死後も届くエドからの優しさとユーモアに溢れた手紙やメールや贈り物。エドの遺した謎を解き明かそうと、エイミーは彼が暮らしていたスコットランド・エジンバラやかつて2人で時間を過ごしたイタリアのサンジュリオ島を訪ね、そこで彼女が誰にも言えず封印していた過去をエドが密かに調べていたことを知る。

イタリア北西部のオルタ湖に浮かぶ唯一の島であるサンジュリオ島は、古くから巡礼の地として名を馳せ、島の大部分が礼拝堂、神学校などで占められている。「神の水彩画」と言われたその美しい光景は、まるで緑に包まれた小さな宝石のようだ。

ジェレミー・アイアンズは、相変わらずダンディでスラリとしたスタイルの良さ、知性的で渋い演技が魅力的だった。自己中心的な愛情だが、死ぬ間際までその愛を貫く姿を壮絶に演じていた。エイミーは、アルバイトでスタントマンをやっているという設定なので、普通の女子大生とは思えぬアクションも披露してくれる。儚くて虚ろなオルガ・キュリレンコが一段と美しく映る。家族がいるのに若い女性にうつつを抜かす男性の身勝手さは拭いきれないが、ジュゼッペ・トルナトーレとモリコーネの描きたかった世界を垣間見た気がした。

数十億年前に死してなお地球に光を届ける星々のように、命尽きても愛は大切な人を照らし続けることが出来るのか、、、、
そんなロマンに満ちたメッセージがモリコーネの素敵な音楽にのせて心に響く作品だった。
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