年末が近づいているのに映画鑑賞ペースがダダ落ち…。しばらくサスペンス系ばかりが続いてたので久しぶりのヒューマンドラマ、かつ超有名作品を。
朝鮮戦争で出征した退役軍人のウォルト(クリント・イーストウッド)は妻に先立たれ、息子家族たちからも煙たがられ、愛犬と孤独に暮らしていた。ある日、彼の誇りである名車「グラン・トリノ」を狙い、隣家のモン族の若者タオ(ビー・ヴァン)が盗みに入る。ウォルトは銃を構えタオを追い返すが、彼は地元のストリートギャングである従兄弟に脅されていたのだった。成り行きでギャングからタオ一家を守ったウォルトは次第に彼らと交流を深めていく。
めちゃくちゃ名作だった。
イーストウッドの作品は名作とわかっているのになかなか手を出さない自分の天邪鬼さを呪いたくなる。
クリント・イーストウッドという役者はどうしてこうも昔気質の頑固なステレオタイプのアメリカンジジイをここまでカッコよく演じてしまうのか。
"人のすることはなんでも気に食わないのさ"
"この先あの家に1人住まいだ。厄介なことになるぞ"
妻の葬式で息子たちに陰口を叩かれるこの一瞬で、頑固者で家族との付き合いも上手くいっていない孤独な独居老人であることを描き切ってしまう演出の上手さ。眉間に寄ったシワとへの字に歪んだ口元が見事。
アジア系や黒人にナチュラルに差別意識を持ち、男たるものこうあるべしというステレオタイプなマッチョイズムの退役軍人。
それでも彼の心には優しさがあって、だから隣家に悪態をつきながらもスー(アーニー・ハー)との交流がなんとなく始まる様もとても自然。
頑固で口は悪いけど、筋の通った男らしさを息子のようにタオに伝えていく姿は人生をやり直しているようだった。
床屋との口の悪いやりとりを勉強させたり、知り合いの建設屋に紹介をしてやったり、タオがどんどんトロ助じゃなくなっていく姿が嬉しい。工具店で2人がガッチリ握手を交わすシーン本当に最高。
"心の重荷を軽くしたらどうですか?"
"過去に過ちを犯して自分を許すことができない"
頑なに殻に閉じこもろうとするウォルトを亡き奥さんとの約束のため、彼を気遣う若造神父(クリストファー・カーリー)がめちゃくちゃいい奴だったなぁ。
自分の行いにより、大切な人を傷付ける結果となっしまったウォルトの決意のようなシーンがたまらなかった。
何も言わずにいつもの床屋で散髪し髭を剃ってもらい、スーツを仕立てる。
"俺の心は安らいでる"
自分の身体が病気に蝕まれているとわかっていたからなのか、スーやタオのために何かを残したかったのか。長年の懺悔を吐き出したウォルトが人生を賭ける意味があると見出した最後の戦い。
こんなほろ苦い結末なのに、作品全体をとおして静かに流れるヒューマニズムや温かさやユーモアみたいなものはさすがイーストウッドの成せる技なのかな。
"自慢できる友達だ"
"お前の人生はこれから"
本当に素晴らしい作品でした。