モノクロ調でバキッと決まった映像で繰り広げされるオフビートなロードムービー。『ストレンジャー・ザン・パラダイス』と似た作風と思いきや、初期衝動的ヒリヒリを感じるそちらと比べて今作はかなり洒脱な印象。
これはもうロベルト・ベニーニの醸し出す空気感がかなり影響している気がしていて、実際に作品プロットにおいても彼が登場してから牢獄の空気感がガラッと変わる。なのにこいつが一番サイコなのかよ、が判明するシーンでのメイン2人の表情なんておかしくてしょうがない。
会話を肝心なところでブチっと切ったと思えば暗転による転換はやけにもっさりと長く、それによって駆け足感がまったくない独特の間が醸成され観客を急がせない。さらに言えば普通に考えると最高潮になりそうな脱獄シーンなんて過程をまったく見せず、気づいたら外に出てる始末の肩透かし。九死に一生を得た最大の要因、ロベルトによる恋のはじまりすらも一連はまるっと割愛されてるしその顛末を事後的に説明されてもよくわからない。
要はストーリーとしての旨味成分をもはや意図的に排除しているような印象で、逆に際立たされてるのはなんとも言えない微妙な関係の3人によるだらっとしつつも意外と楽しそうな雑談の応酬。そんな雑談すらバサバサとカットされるのだがその行間中にいつの間にか交友が深まっていたようで、意外にも間柄が確立されており喧嘩別れしても結局全員戻ってくるのが微笑ましい。
もちろんさよならのシーンにあっても情緒的なことは言わないし、そんな風にも撮らない。監督の照れ隠しがそのまま反映されたような彼らの友情にも似た関係性はこざっぱりしており、だからなのか別離はよくわからないけどグッとくる。中々に珍しい鑑賞後感。
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「現状から抜け出す」といったアンチテーゼ的なものをほのかに感じなくもないが、終始とぼけたトーンなのでそういう社会派ぽい解釈はそっちで勝手にやってくれやといった心意気を感じるのは相変わらず。ジャームッシュのそういうところが好きなんだよなあとあらためて思う。
タイトルの『ダウン・バイ・ロー』。かつて1920年代に北部に移り住んだ黒人が「俺たちもやってける」として使った決意がどんどん派生して、なぜか刑務所内の「親しい兄弟のような間柄」をあらわすスラングにまで至った間口の広いワード。
意義深い言葉がポップな姿に成り変わっていくこの感じを、ジャームッシュ監督が大変気に入ってタイトルとして採用したらしい。なんかとてもイメージ通りで嬉しくなるエピソード。