都部

ドラえもん のび太の南海大冒険の都部のレビュー・感想・評価

2.8
藤子・F・不二雄没後の初めての映画であり、その作風に変更点などが多々見られる作品であるが、架空を切り出しとするテンポの良い導入や題材に縛られない柔軟な展開など作品としてのバラエティ性という点ではそれなりに満足感を得られる作品であるように思う。

現代を舞台とした冒険が突如17世紀へのタイムトラベルにより路線変更する流れは脚本として荒々しさを感じるものの、そこから海賊との交流と面子の分断によって物語の間を保たせるだけの展開は見られる──個人的には17世紀にトラベルする組/海に流され現代に残る組に別れた方が多層的な物語が展開されたように思うが──ただ、それ故にただ時代を取り替えただけの海賊を巻き込んだ普遍的な冒険劇となっている印象は否めず、はっきり言って物語そのものはそれほど面白くない。

現代を舞台に宝探しをするという当初の魅力的な目的から、ともすれば宝などあって当然な舞台での作劇は魅力に欠けるし、サブキャラクターである海賊のドラマも表面的の域を出ない。ジャイアンに纏わるラブコメなども展開されるが、それも別に何らかの形で要素が結実することもないのは……賑やかしの為の要素があまりにも多すぎるのはあるかも。

また真相部分における思ったよりガチの悪との対立は、その所業を思うとギャグコメディ的な反応はノイズだったかな……。改造された生物との攻防は本作の数少ない愉快な部分で、縛りプレイさながらに限られた局所的な道具で小刻みに乗り切ってく流れは見ていて面白い。

総評として原作者の死去を受けて、新たな路線を開拓しようとした痕跡は多く見られるが、一年目ということもありそのどれもが表面的な要素として上滑りしていて、一定の満足感は得られるが逆に言えば一定以上のそれは得られないという点で評価が定まっている作品と言える。
都部

都部