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容疑者のarchのレビュー・感想・評価

容疑者(2002年製作の映画)
3.8
自分が一番萎えてしまうシーンは撃ってしまえばいいのに長々喋ったりすることで主人公が窮地を脱するところである。スリルもクソもないし、だったら最初からそんな状況にするべきじゃないと思う。
そんな愚痴から入った訳だが、そんなシーンが象徴するように随所に残念さが散見される映画だった。
しかし、例によって褒めるところがない映画という訳では無い。デニーロの演技は正直マンネリ気味で目に余るが、ジェームズ・フランコの演技は中々に良い。「スパイダーマン」で世界的認知度を得た同年に公開された本作、合わせて観ることでボンボン演技と対称的なグズ野郎演技で演技の幅を感じることが出来ただろう。

本作には「栄枯」というものをすごい感じる。不可逆な時間が関係や環境を風化させる。それはロングビーチが象徴的で、ビーチ沿いの遊歩道のカットが印象的に使われている。その「栄枯」は主題である親子の確執へと移り、やり直せるかという問題に置き換わる。
逃げた父親がロングビーチに取り残された子に再び向かいあい、ロングビーチに帰ってくる。ロングビーチは再び栄えることはないかもしれない。だが、親子の関係はやり直せるのだと今作は語っているのだ。

全編を通してブルーな色合いで統一された画面、しかし、最後のビーチは異様にイエローだ。この状況や心情の変化を色彩でコントロールしている点で共通しているのが「ムーンライズキングダム」である。海に近い舞台設定も似通っている。
限りなく薄いが、ウェス・アンダーソンに影響を可能性はあるかもしれない。
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