ダルマパワー

エクソシスト/ディレクターズ・カット版のダルマパワーのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

午前中から見るのは控えた方がよかったかもしれない。緑色の嘔吐物が頭から離れない。超常現象のシーンがいずれも、どうやって撮影したのだろうと気になり、繰り返し見てしまった。

主題となる悪魔払いと、カラス神父の亡き母への負い目との葛藤が、うまく混ざったストーリー。

初めは身体的、精神的な異常とみなし病院を回るも解決せず、医者からは軽い冗談混じりの口調で『悪魔払い』を薦められる。彼らにしても、半信半疑なのだろうが、他に説明がつかないといった面持ち。

藁にもすがる思いの母親はアザになった頬を隠して神父に会いに行く。

娘がもしかしたら殺人をおかしたかもしれない。

刑事が訪ねてきた際、コーヒーのおかわりを取りに行く母親の動揺した表情を、棚の枠越しにフレームをつくって写したショットがとても印象的だった。刑事には見えないところでの母親の表情が見え、かつそこに目線を集中する、なるほど、こうやって使うのかとお手本になるショットだった。

本作はショットもさることながら、音が見事だった。人が生活のなかで触れる事のない音、を屋根裏から聞こえる衝撃音や、悪魔の声などに使い、明らかに異常、人間の力を越えた何かの存在を、音から醸し出していた。

とにかく、すべてが圧倒的だった。これだけ特殊効果を入れるとどこかに違和感が出てチープさが出てしまいがちだが、本作にはそれが一切なく、究極に気持ち悪く、吐き気のする恐ろしさがあった。

悪魔とエクソシストの対決の日、メリン神父が到着した際の家の様子は、煙に包まれ青白く、もはや墓場のような印象だった。室内の凍りつく寒さの演出といい、いつのまにかあの空間を、この世のものではない所に変えてしまったのも見事だった。

※追記
撮影時の演出の逸話の数々、やはりフィクションやノンフィクションのカテゴライズと、リアリズムとフォーマリズムのカテゴライズは別次元の話なんだなと再認識。

本作はフィクションで超常的な話だが、あくまで演出はリアルに行われている。故に、作品が架空でない、まるで本物の話のような感触で、鈍く腹の底に残るんだろうなと思った。
ダルマパワー

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