◎福島弁による南洋帰りの甥と叔母の擦れ違い劇
1942年 大映東京 モノクロ 100分 スタンダード
35㎜ *状態良好でホワイトノイズもなし
*0 国立映画アーカイブ
山参道 フィルム詳細 スタッフ・キャスト
nfad.nfaj.go.jp/det.php?mode=3&data_id=45623&key=¬ation_id=&sakuhin_id=2075&op=AND&key_y=&s_page=&page=0
全編、福島県湖南地方の方言で話されるので、地元民か、原作の真船豊の戯曲をあらかじめ読むか等の前提知識がないと始まってしばらくは半分ほども理解できない。
出演者も見知っているのは、杉村春子と、ごく僅かな時間しか出演しない上田吉二郎だけだ。
原作は国会図書館サーチで読むことができたが、映画ではかなり場面を増やして作品自体を膨らませているようだ。
サブと通称される万三郎(中田弘二)が登場すると、話す言葉も行動も明快なので、一気に話が分かるようになる。
「南洋に出稼ぎ」して帰ってきたとのことだが、サイパンかミクロネシア諸島なのか。
一財を成したという成功譚については詳細は語られない。
ある意味、中盤以降に登場する万三郎は、本作の序盤で提示される「サブは何故に帰って来るのか?」という謎の「解答」として現れるだけで、真の主人公は「10年前に経済的に困窮したサブに金を融通した際に、だるま屋の家を無断で自分名義に書き換えてしまったのを取り戻しに来る」と勝手に思い込んで悩んでいる叔母のおとり(杉村春子)に違いあるまい。
猪苗代湖の南を舞台とする、ある種ミステリータッチの村の喜劇ということなのだろう。
原作者の真船豊(1902-77)は、まさしく現在の福島県湖南町福良の出身。
早稲田の英文科に進むも、社会主義の影響を受けて退学。
1931(昭和6)年には、プロット(日本プロレタリア演劇同盟)戯曲研究会に参加。
本作「山参道」は、1941年に発表されて新生新派により公演され、翌年、情報局賞を受けるから、当局に警戒される作家では既になかったのだろう。
戦時下の暗さを感じさせない、福島という土地に密着した地方色豊かな喜劇として完成度は極めて高い作品だ。
機会があれば再見を期したい。
なお、「山参道」は、「やまさんどう」で、村の小高い山の上にある墓地に参るための道のこと。
久しぶりの里帰りで墓参した折に、万三郎は、この難儀な山道を便利にしたいと思い立ち、石段を整備するために村に寄付をするのだった。
*1 「真船豊」で検索
ja.m.wikipedia.org/wiki/
*2 郡山ゆかりの作家 真船豊
www.bunka-manabi.or.jp/bungakunomori/writer/mafune.html
*3 真船豊文学碑
www.bunka-manabi.or.jp/bungakunomori/writer/uploads/2022/12/mafune.pdf
*4 真船豊生家
www7b.biglobe.ne.jp/~zai/buken/KKF.htm
*5 キネノート 山参道
article.kinenote.com/main/public/cinema/detail.aspx?cinema_id=68310#cont_movie
《上映館公式サイト》
国立映画アーカイブ
2024.7.30 - 8.23 上映企画
返還映画コレクション(2)
――第一次/二次・劇映画篇
【18.山参道】
www.nfaj.go.jp/exhibition/repatriated_film202407/#ex-84595