Shelby

ウンベルトDのShelbyのレビュー・感想・評価

ウンベルトD(1952年製作の映画)
3.5
正直どう評価していいか分からない作品だった。
年金暮らしでは家賃で殆ど消えていく生活。家主は意地の悪い女主人。家賃滞納を理由に家を追い出されようとしている。
世の不条理、そして現実の過酷さ。お金がないと生きていけない。社会の厳しさに為す術なく生涯を終えようとする様は見ていて胸が痛い。

そんなウンベルトにはフライクという愛犬がいる。ウンベルトにとっては唯一の家族同然の存在。故にフライクだけでも、幸せにしてやろうとペットホテルに預けようとしたり貰い手を探そうとするも、どこぞの老人からわざわざ犬を貰い受ける義理はないとばかりに世間は冷たい。

物乞いをしようと掌を差し出すも、自尊心を捨てきれずお金を貰うギリギリで掌をひっくり返す場面。人間の尊厳を保てたウンベルト。いかに追い詰められていたのかがよく分かる。

1度は死のうと踏切に飛び出そうとするが、フライクの動物的本能である死に対する恐怖が自殺を未遂にさせた。その後、まばゆい陽の光に照らされながら、全てのしがらみから解放されたように公園で遊ぶふたりの姿。それがたとえ、一時だけの幸せだったとしても、彼等には充分な時間だったのではなかろうか。
散々世の不条理を見せておきながら、最後にその終わり方は狡い。涙こそ出なかったものの、生命力溢れるラストに胸が締め付けられた。
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