ENDO

恋も忘れてのENDOのレビュー・感想・評価

恋も忘れて(1937年製作の映画)
4.2
横浜は本牧にあるチャブ屋で働く桑野通子に宿る女の強さ。戦前のアパートメントとダンスホールの天井の高さやその和洋折衷のモダンさ。スタンダードサイズの中で踊りも喧嘩もその奥行きの深さによって演出されるが、やはり通子の住むアパートの前の路地と階段が印象的でクレーンによる上下の動きも滑らか。霧立ち込める中、周二と俯き加減で歩む帰り道にグッとくる。転校の日に山手の学校から引き返す通子をドリーで捉えるカメラ。雨の日にレインコート姿で校門の前で引き返して彷徨う春雄。子供たちの残酷なまでの村八ムーブ。爆弾小僧vs突貫小僧。中国の子供達との交流。港町における文化の混淆により顕著となる場末の女たちの人生のレイヤー。忍節子にだって逃げ出した女にだってそれぞれ人生が流れている。一筋縄ではいかない哀しみを背負った人間たちがカメラの前で蠢いている。傘を回す登場シーンから鮮烈なショット。岡村文子に直談判する女たちの顔。白黒のコントラストが鮮やかなドレスで1人ステップを踏む通子。画面の支配力が段違いでした。
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