LEONkei

砂糖菓子が壊れるときのLEONkeiのレビュー・感想・評価

砂糖菓子が壊れるとき(1967年製作の映画)
2.0
飴玉はとろとろっと嘗めて食べるか、ばりばりっと噛んで食べるか…。


〝マリリン・モンロー〟がハリウッドセレブ愛用の幻の高級ミント〈ヒントミント〉なら、〝若尾文子〟はクチナシで色付けした甘菓子の宝石と言われる〈琥珀羹〉。

〝マリリン・モンロー〟をモデルとした原作〝曽野綾子〟の小説を〝橋田壽賀子〟が脚本に落とし込み、左翼ヒューマニズムの名匠〝今井正〟が監督するもその描写は甘く内容も生ぬるい。

一見〝若尾文子〟が役柄にそぐわないのではとも思えるが、そこは完全に独立した作品と思えば人間の脆さを露呈する興味深い作品。

美貌に群がる男たちは自制心を失い一瞬で虜になる、然りとて一瞬で去りゆく。

外見の美は永遠ではなく一瞬、また人は他の美に靡くものと誰もが分かっているはずなのに、それでも美を追求するのは人間の性。

芸能プロダクション社長、大学教授、プロ野球選手、劇作家、新聞記者と、彼女に群がる男たちが列を成して蟻のように甘い蜜を吸うのもまた生き物としての性。

しかし見た目の美味しさと相反し蜜の味は直ぐに飽き、本当の味を知る前に吐き出しポイッと。

大学教授〝船越英二〟が気取って『カニコロッケでも食べますか?』の誘い文句は、多分当時はお洒落な食べ物か珍しいものかで何だか滑稽で頭にこびりつく。


ちなみに自分は飴玉は舌の上でゆっくり静かに転がしながら舐め、少しでも長く味を楽しんで食べます..★,
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