CHEBUNBUN

トップガンのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

トップガン(1986年製作の映画)
4.3
【破らなきゃいけないルールだってある】
私の青春の映画『トップガン』の続編『トップガン マーヴェリック』が遂に日本公開される。気分を盛り上げるために久しぶりに再観しました。

鐘のような反響の中、1969年にエリート養成学校ができた旨がテロップで語られ、タイトルが出る。黄金色に包まれたデッキの上で、エンジニアの活動をカメラは捉える。そしてテイクオフ!「Danger Zone」が流れる。『フラッシュダンス』、『ビバリーヒルズ・コップ』と耳に残る音楽で映画を盛り上げたジェリー・ブラッカイマーの集大成ともいえる、どの曲も耳に残る心躍る青春映画の幕開けとなる。

不良パイロット・マーヴェリック(トム・クルーズ)は無茶により仲間を救う。上司に怒られるものの、腕を認められ、相棒とエリート養成学校に派遣される。そこでも彼はヤンチャっぷりを魅せる。難しいシナリオをクリアすると、管制塔ギリギリを飛行したり、女性教官チャーリー(ケリー・マクギリス)と情事に励んだりと仲間の輪を乱しまくる。やがて、ある事件により彼は自信を失い、さらに仲間との溝が深まるが、いざ実践になると才能を再び開花する。

当時の技術の限界に挑み、戦闘機の曲芸を余すことなく魅せる。確かに、高速で飛び回る戦闘機を画に収めるのは難しく、アクション自体は観辛いのだが、ウィリアム・A・ウェルマン『つばさ』に匹敵するドッグファイトへの熱い探求を前に、その観辛さはどうでもよくなる。また、本作は地上パートにおいて、画へのこだわりの高さがうかがえる。バイクに乗るマーヴェリックの背に滑走路を映す。黄金色に光る海を背に彼や仲間のシルエットを収める。どのシーンを切り取っても青春の代表の1ページになりゆる構図を形成しているのだ。

ゆえに、久しぶりに観た私であったが中学時代同様に楽しめた。一方で脚本に問題がある作品でもある。教官が映画の名台詞的に「ルールはあなたを守るためにある」という場面があるが、それを活かしている場面が皆無なのだ。ルールに従い、仲間との協調で実戦に挑んだパイロットたちが次々とミグにやられていく中、マーヴェリックの無茶苦茶なドッグファイトが救うシナリオ、つまりルールを守るより無茶をすべきだと言っているような作品なのである。確かに実戦では時に、ルールを破る必要があるが、だったら「ルールはあなたを守るためにある」って台詞は不要な気がする。無茶をしまくって教官になったマーヴェリックが、訓練生にどのような言葉を投げかけるのか?「ルールはあなたを守るためにある」をどう扱うのか?『トップガン マーヴェリック』を観るのが楽しみである。

P.S.そういえば、本作ではトム・クルーズが短距離走ランナーみたいな走りをしない貴重な映画ではないだろうか?
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