Shu

月に囚われた男のShuのレビュー・感想・評価

月に囚われた男(2009年製作の映画)
4.0
「月に囚われた男」を恵比寿ガーデンシネマで観てきた。
これは久しぶりにハードなSFで面白かった。デヴィッド・ボウイの息子ダンカン・ジョーンズ監督。
舞台は、近未来の月面。地球に必要なエネルギー源を採掘するために3年間たったひとりで月に派遣されていた男、サム。地球との直接通信は故障のため叶わず、話し相手は1台のA.Iコンピュータだけの環境だったが、任務完了まで2週間を残すある日、サムは体調不良で事故を起こす。医務室で気が付くと人影が。自分以外誰もいない筈なのに・・・
そんなお話。
それほど複雑ではなくむしろシンプルなSFスリラーかな。ホラーではないです。仰々しくないSFXがいい。というかミニチュアの多用。なんとも70~80年代なSF的雰囲気がいい。「2001年宇宙の旅」や「サイレントランニング」「アウトランド」などの懐かしSF映画へのオマージュとも受け取れますが低予算なのが一番の理由なんだろう。
というのはこの映画、500万ドル以下の予算で製作されてるとか。500万ドルというと5億7000万くらい?日本では超大作以外では平均それくらいの予算で撮ってるんだけどね。
だもんで本来、月は地球の1/6の重力なはずなんだけど普通にスタスタ歩いてる。まぁそこは目をつむりましょう。
閉塞的な基地空間、登場人物はほぼサムひとり、そして迫るタイムリミット、A.Iコンピュータの「ガーディ」。このA.Iコンピュータ「ガーディ」が「2001年宇宙の旅」の出ていたHAL9000に似たポジションなんだけどこっちは意外にいいヤツ。もうA.Iコンピュータみたいなのが出てくるだけで私はこいつ絶対裏切る!人間に反逆するはず!って先入観で観てたけど逆に裏切られてそこはある意味斬新かも。でその声の出演がケビン・スペイシーというのも頷ける。主演のサム・ロックウェルの演技力も凄かった。なんせほとんどひとり芝居で出ずっぱり。飽きてくるどころか逆にどんどん惹き込まれてく。

ネタバレになるのであんまり内容には触れられないけど今日の営利目的を追求した労働者への過酷な状況を彷彿させたり人間の尊厳をも考えさせられるそんなお話。
ダンカンこのやろー!やられたよ!泣かせやがって!
ただ最後のナレーションはちょっといただけなかった。そこで、監督いいひとになっちゃいけないんだよと言いたい。
「シャッター・アイランド」「第9地区」「月に囚われた男」と最近切ない映画ばかり続けて観てるなぁ。

(2010年04月26日レビュー転載)
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