菩薩

カルロスの菩薩のレビュー・感想・評価

カルロス(2010年製作の映画)
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長尺映画を観るとよく頑張ったバイアスが働いちゃう軟弱者なので星は付けないが面白かった。伝説のテロリストと呼ばれる男の20年余りの活動を5時間半のスケールで描く超大作であるが、その終着点が「金玉痛えぇ…」であるのは余りにも哀れ。もはや時代と世界からの要請の様にある種の必要悪として、そのテロリズムの象徴として輝かしく裏社会の中に君臨しつつ表社会に牙を剥き続けた筈の男も、ベルリンの壁が崩れソ連をも崩壊した後にはまるで無価値な「幽霊」として誰からも必要とされる事も無くたらい回しにされ、縮小する自意識とは対照的に肥大する睾丸を抑えながら醜態を晒す事になる。三部に入り若干ペース配分をミスったのかジャンプカット多用で編集も荒くなった様に思えたが、たぶんあれはカルロスの所在の無さをも表現しているのだろうと好意的に捉えておく。銃と女を愛した男とは言うが女性の扱い方がほぼ渡部なので天罰がくだったのだろう。東西冷戦、第三世界の勃興、時代の大きなうねりの中で反帝国主義の旗印を揚げたはいいものの「大義の為」と朧げな紐帯の元では徐々に崩れていく急進左派の弱々しい連帯。どうしても若松孝二の『実録 連合赤軍〜』と比べたくなってしまうが、そこと比べると「金のかけ方」の差がまるでフェアじゃないし、日本とフランス映画界の雲泥の差を感じてしまい悲しくなるからやめよう…。にしても革命戦士が貞操観念に疎いのは世界共通なのか?
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