カルロスの作品情報・感想・評価

「カルロス」に投稿された感想・評価

highland

highlandの感想・評価

4.5
テイストとして『グッドフェローズ』とか『カジノ』とかにめちゃ近い(イデオロギーの有無という違いはあれど。

本当に栄枯盛衰という感じで、議論ばかりして行動しないプチブルのインテリに嫌気がさした主人公はパレスチナ奪還のためのゲリラ活動に身を投じて名を上げるけど最後には夢破れ、革命戦士どころプチブル以下みたいな存在になってひたすら没落の道を突き進む話。理想を抱いて死ぬ気満々で、実際そうなった同志も大勢いて、でも主人公は結果的にそうは生きれなかった存在である。

でも実際、やってる最中はそれは空虚なものなんかでは全然なくて、反帝国主義、打倒資本主義とかを本気でやろうとしていて、「武器は身体の一部」 とか「従わぬ者は処刑」「革命万歳」とか、理想を反映した強い言葉を連発するんだけど(会話シーンが身体性を帯びておりどこかラッパーみたいな調子) 、それは共産主義の理想を本気で信じているんだと分かる。どこにも辿り着けず上手くいかなくてもやってやる感に満ちていて頼もしいし、OPECの会議襲撃して要人たちを人質にとって立てこもるとことかも『狼たちの午後』みたいにサンスペンスフルで、バイオレンスに満ちててかなり充実したものになっている。

でもそうやって、反帝国主義を掲げて第三世界の復権を目指す主人公たちの理想が、冷戦終結とともに一気に空虚なものになり、国家からもお払い箱になって凄い勢いで落ちぶれて行くことの寂寥感が半端ない。若気の至りのツケを払わされるだけになって、ただの女垂らしのプチブルになり果てる。イデオロギーで国家や組織が動いていた時代の方がめっちゃ青春という感じで面白くて、冷戦終結以降は完全に虚無というのが無常を感じさせる。

『カルロス』においては、主人公たちの活動やイデオロギーの宣言に対する世間の反響とかが全く描かれないため、映画見てるだけだと政府とテロ組織との内輪で駆け引きしているだけで、それらの活動が世間に何のインパクトも与えてないように見えてくる(これは意図的なものかどうかは分からないけど)。

革命家たちがパンクミュージックを聴いてるのは発想として面白い(実際どうだったのかは知らないけど)。劇中でも同時期のwireとかThe FeeliesとかNew Orderとかパンクロックがめっちゃ流れる。やってることもロックバンドとかにある意味近いし。

テロ組織周りにはレア・セドゥみたいな顔と体形の女性ばかり出て来るが、テロという題材に豊満な肉体はそぐわないからか。性描写はかなりあけすけ。
カルロスを演じる役者の体形変化は凄まじいが、全体的に男性の俳優が色気を持って撮られている。

映像的には、ジャンプカット使いまくりでテンポが早くて展開はかなり詰まっている。TVドラマ的。それこそ、画面の手前に向かって人物が歩いてくる途中とか、机の引き出しの中から本を取り出すその動作の途中とかの単位でバシバシとジャンプカットを使って無駄な時間を省いて行く。観客の注意が逸れるようなシーンがない。

事件の顛末は当時の記録映像を随所にインサートする形で語られる。それに合わせて演出は基本的にリアリズムで暴力は生々しい。ソフトフォーカス、望遠レンズの多用。
2018/10/19
それで、エッチなおじさんの睾丸はどうなっちゃったの?

第2部の途中までをざっくり言い表すと「世界に莫大な迷惑をかける部活もの青春映画」という感じ。どんなにプチブルをやめようとしてもプチブル的なものに回帰してしまう若者たちが「みんなでせーのでプチブルをやめようね! せーのっ!」でがんばったゆえの末路というか。そこにロックミュージックが掛かってくるのが…主に準備シーンと失敗シーンで掛かるのが…うん…味わい深いね…。
テロは何度も何度も失敗するし、実行されたテロに関しても被害の状況が記録映像の引用で語られるくらい。カルロスたちはアラブ圏や冷戦の利害の中で利用されるばかりで、そのうちその存在は共産国の中で押し付け合うようなものに成り下がる。このどこにもたどり着けないモラトリアムの感触は、何度も繰り返される飛行機の着陸拒否や入国拒否というモチーフによって否応なく増していく。
ここまで言うとものすごく虚無的な作品っぽいんだけども、見ているとあんまりそうではない。意地の悪さすらあんまり感じない。“やってる感”があるからかもしれない。部活みたいに見えてくる。海辺ではしゃぐシーンなんか強化合宿中の1シーンみたいにキラキラしてるし、OPEC事件で自分たちの要求が通らなかった時の悲しみようときたら夏の大会に負けた3年生のような感じなのである。
ただ第2部後半からはそういう雰囲気もなくなり、カルロスは「俺には利用価値がある」と吹聴して保護を求める。カルロスは実業家のフリをして身を潜め、妻との間には娘ができる。冷戦が終わると彼は“どの国にも受け入れてもらえない存在”となり、亡命先で軍事学校の先生をしながら娘を心配していると睾丸の病で倒れ、そのままフランス政府に引き渡されるのである。

最近ずっと洋ドラを見ているのでドラマみたいな作品だな〜と思いながら見ていたんだけど実際最初はテレビシリーズとして作られたのね。6時間ほとんど飽きることがなかったのは本当にすごい(きちんと1部ずつ休憩をしたからかもしれないが)。肝要なのは映さないということ。テロ活動は何にもつながらなかった暴力のように見え、テロリストはウイスキーとタバコのみで動き回る幽霊のよう。ドラマの重きはどちらかというと人物の容姿や表情のゆるやかな変化のほうにあり、それを必要なだけの時間を使って見せている。“活動家”カルロスは“兵士”になったあと、モラトリアムの学生のような状態を経て“有名人”となるが、その代わりに組織を追い出されて“傭兵”となり、最後には男性性の残骸を纏いつかせた“幽霊”となる。その流れを役者の身体が心配になるほどの体型変化や顔立ちの変遷で表現している。特に顔立ちの表現はすごく、冷戦終結後には一目ではカルロスと同定できないほどに何かが落ちてしまった顔が見られる。最後の方は“性的魅力だけが妙に残ったおっさん”としか言いようのない何かになってしまうし、それも睾丸を患って消えてしまうのである。最後の方はカルロスの睾丸が心配で「サスペンスが睾丸に集約している…」「マクガフィンが睾丸…」という感じになった。よい映画でした。
netfilms

netfilmsの感想・評価

4.1
 ベネズエラの活動家イリッチ・ラミレス・サンチェス(エドガー・ラミレス)は革命を崇拝し、パレスチナ解放人民戦線(PFLP)のリーダー、ワディ・ハダドに面会し自分を売り込む。まず手始めにPFLPの補佐としてジョセフ・エドワード・シーフを銃撃。日本赤軍によるフランス大使館銃撃の支援、オルリー空港でのイスラエルの航空機砲撃など、数々の事件で名前を売っていく。そして遂にPFLPと協力関係にあるイラクのサダム・フセインから、サウジアラビアの石油相とイランの石油相抹殺事件の首謀者に指名される。今作は主人公が革命テロリストとしてのし上がっていく姿を、当時のニュース映像を交えながら克明に描いている。革命の名においてはどんな非道さも残酷さも許されると言わんばかりのカルロスの残忍さと、仲間に見せる優しさとを対照的に描きながら、遂にフセインに指名されるまでの150分間を一気に見せる。彼の生い立ちやテロリストを志すようになる動機はここでは一切開示されていない。テロリストとして過ごした彼の20年にも及ぶ政治活動にフォーカスしていく。そのことが逆に彼のカリスマ性を浮き彫りにするかのようである。

 ここでもまたアサイヤスのアジア(黄色人種)への尋常ならざる思いが噴出している。日本赤軍のオランダ・ハーグでのフランス大使館銃撃のくだりには思いのほか時間が割かれている。空港で偽造パスポートと偽札所持で逮捕されるところから、オランダ・ハーグのフランス大使館に短銃武装で乱入し、占拠。大使ら11人の人質と交換にパリで勾留中の男を奪還、オランダから30万ドルと仏機を出させ、19日にシリアで投降する。カルロスとはあまり関係ないこの日本赤軍による最初の事件の一部始終を克明に描いている。アサイヤスがこのイリッチ・ラミレス・サンチェスという男に惚れ込んだのは、21世紀のテロの行方を予見すると共に、カルロスの尋常ならざる行動力への興味からではないだろうか?70年代という時代にヨーロッパやアラブの国々を転々としながら、様々な国で事件を引き起こしたイリッチ・ラミレス・サンチェスという男の本質に迫ることが、アサイヤス作品の根底にある国境のないボーダレスな登場人物に相通じる世界を持っているように思える。
Lemmy

Lemmyの感想・評価

3.8
世界同時革命の思想が、各「国民国家」の庇護を受けることによって、闘争という手段が目的化するという皮肉であるとも読める。6時間以上の映画なのに、民衆が描かれない、70年代の新しい社会運動の描写がないという逆説がそれを物語っているように思う。
したがって、描かれるのは社会運動としての革命ではない。これは国民国家の暴力装置の鏡像ということになる。
描かれたことと、描かれなかったこととの間が重要になる。
dramatica

dramaticaの感想・評価

4.0
パーティーで懐からポロっと落ちる拳銃!革命を現実のものとしようとした人々が、どう考え何を成し、何を成しえなかったのかを地に足をつけた描写力で再現した傑作。
実在のテロリスト”イリイチ・ラミレス・サンチェス”コードネーム「カルロス」の半生をオリヴィエ・アサイヤス監督が映画化。
元々はフランス・ドイツ合作の3本のミニドラマシリーズ/TV映画で、劇場版に再編集されて、日本でも数年前に公開してた。当時見たかったけど、ボロボロだったので観に行けなかった。

オリヴィエ・アサイヤス監督の撮りかたは変わってるんだけど、これを観て、登場人物に自分の心境を不自然に語らせるのがやりたくないんだろうなとわかった。あくまで自然にドキュメンタリータッチで撮ってる。

当時の風俗や革命に熱狂する人間の様子が分かる。とりあえず全員が煙草をスパスパ喫ってて、カルロスは出てくるシーンぜんぶで喫ってんじゃないかと思ったくらい。

最初は革命を目指していたんだけど、段々と口だけになって、カルロス自身が、批判していたプチブルのようになっていくのは、かなり惨めだった。元々暇なときは女としけこんでるか酒を飲んでばっかりなので、国の支援を受けられなくなって活動できなくなっていくと、遊びに拍車が掛かっていく。どんどん太っていく。時代遅れの骨董品はその通りの台詞だった。

エドガーラミレスは晩年やOPEC襲撃前の太っている状態を再現していた。エドガーラミレスはこの監督の演出に合わせた自然な演技をしていて、力が入ってた。

最初は国への不信感や理想を求めてだったのが、段々と国家間の争いの駒としていいようにテロリストたちが利用されていったのがわかる。テロリストたちは自分たちが国を利用してると思ったのだろうけど、実際は逆だった。
完結編だと資金や支援に口うるさくなってる様子しか出て来なくて、栄光編のようなテロ活動は出来なくなってる。
カルロスを捕まえたのが野望編でカルロスに撃たれた刑事だったのがドラマチックだった。
理想を実現できず堕落していった人間のドラマとしてもおもしろかった。第二部の栄光編が派手でおもしろかったけど、完結編もよかった。

こうしてみると、ヨーロッパは昔からテロが頻繁に起こっていたんだな。最近の話かと思ってたけども、意外と多かった。
映画として面白いしすごい!6時間弱一気に見てしまう勢いのような何かがあると思います。
ただ実際の話としてはそんな感想で済む話ではない。
時代がそうなんだからと一瞬思うけども今も変わってない気がする。
力だけではダメだと思う。
力作です。
三部構成で、ゴッドファーザーに近しい。
台頭、隆盛、没落。

革命家の生き様と70年代の時代が生々しく映される。すこぶるかっこいい。いちいち車もかっこいい。ヨーロッパの街並みやカタコト英語⁈訛り英語も気持ちいい。

光と陰は栄光と挫折。

四、五年前ユーロ⁈でやってた時に長時間過ぎて断念したが、観るべきでした。
朝癒すとの相性は良さそうだ。

テロのシーンが何個かあるが、中々いいすよ。立て篭もりシーンも 狼たちの午後 を見返したくなる。
Keiji

Keijiの感想・評価

4.3
淡白ながら野心のある力作。マフィアのボスの様な風貌と口調になっていくエドガー・ラミレスが凄い。
超絶大傑作。

冷戦時代の革命家の半生を映画化したもの。世界中のありとあらゆる諜報機関、テロ組織が出てくる。

一部、二部は、バイオレンス&サスペンスタッチで、三部がスコセッシの『カジノ』や『レイジング・ブル』を思わせる、堕ちに堕ちていく男の話。スコセッシ好きなら絶対好きだろうね!
特に主人公の体型の崩れていきっぷりは『レイジング・ブル』のデニーロを間違いなく越えてるw あれはホント凄い!

仲間たちのキャラ立ちもよいし、音楽もよい。革命ならPUNKだろって発想なのかは知らんが、PUNK使われまくり。特にWIRE。アサイヤスさん!警察ぶっ殺して逃げるシーンでこの曲流すなんてサイコーじゃないか。
>|