開幕の暗さから、シリアスな感動モノを想像したけど、実際は喜劇的な情緒が織り成す至極のヒューマンドラマ。まさにEWFの音楽のように明るくハッチャけてて、色々とギリギリなブラックジョークの数々に楽しまされる。まっすぐ陽気で朗らかで、感動の押し売りはないのに余韻たっぷりな作品だった。
情に熱いが変な同情は決してもたないドリス。素直に自分の正義を貫き、自分を卑下したり周りに悪びれたりしない生き方がすごくカッコよかった。少々の乱暴さも彼の持ち味。
ドリスに注目が行きがちだけど、フィリップも同様に素晴らしい人。自己憐憫せず、周りのことを見下さないし、人生に絶望することなく目に光を宿し続けながら生きてる。富豪って極端に傲慢か寛大かの二択になるイメージがあるのだけれど、フィリップは間違いなく後者だ。そんな彼だからこそ良い出会いに恵まれたのだろうなあと思う。
口数の多くないフィリップだけど、ドリスの言うこと言うことに大口開けて笑うところが好き。かなり危ない発言にも、フィリップが笑うと妙に安心する。芸術も演劇もクラシック音楽も、ドリスは彼なりの楽しみ方を遠慮なく突き通し、フィリップはその全てを笑って受け止める。奇跡の化学反応を見させてもらったような気持ち☀️