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ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK‐The Touring Yearsのvioletのレビュー・感想・評価

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趣味は?と訊かれたら「作曲だよ」と答えていた
「へえ、サッカーはどう?」と誰も興味を示さなかった
でもジョンに言ったら「僕もだよ」って
曲を作る人間に初めて出会った
……それが始まりだ

その直後に映し出されるのは、アンフィールドスタジアムでShe Loves Youを大合唱するリヴァプールFCのサポーターたち。サビだけでなくバースも完璧に歌い上げる群衆の様子が気持ちよく、ビートルズが英国カルチャーを席巻していたことが一目で分かる貴重なビデオクリップ。

こういうセンスある編集だらけで、いちいち心躍らされた!!さすがロンハワード!

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最初期キャバーンクラブ時代から、主にツアー時代を振り返るドキュメンタリー。最近は後期ばかりに注目してたから、初期fabの歴史をじっくり辿ってくれて有難い!

モノクロのライブ映像はカラーデジタルでリストアされ、ライブ音源も特別にリマスターされたという、超豪華な仕上がり。内容は基本的にファンの間で語り尽くされてきたことばかりだけど、新参の私からしたら知らない情報もたくさんあって勉強になりました(^-^)v

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①人種隔離とかの話

ビートルズは音楽を通して人種の壁を壊していったんだなって思った。それも意図的ではなく自然に。「白人は普通こういう音楽を聴く」とか「黒人は普通こういう音楽を聴く」とか、そういう定石が自ずと薄れていくほど、彼らの音楽は凄かった。

"Artists will not be required to perform before a segregated audience" 公民権運動が本格化していた時代に、「人種隔離をするならライブはやらない」と公言したビートルズ。恐れ知らずなジョンレノンが率いるバンドなだけあって、ずいぶん大胆なことやるよね… なにせイギリス出身の彼らがアメリカ政治に口を出すのは極めて危険な行為。ライブ中に撃たれたりしなかったのが奇跡なぐらい。

しかし4人にしてみれば「馬鹿げた差別的ルールに俺らは従わないぞ」という、ごく普通の宣言をしたに過ぎなかったんだろう。

よく「革命を起こすバンド」だと言われるビートルズだけど、曲作りにしても何にしても、彼らの中に「革命を起こしてやる!」みたいなそういう気概は一切感じられないんだよね。すっごく自然体というか。媚び売らないし、人気に酔いしれたりもしない。活動の動機は「いい音楽を作りたい」ただそれだけだったんだよね。

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②ライブをやめてから

5万6千人を収容するNYシェイスタジアム公演にて。VOX社が作った特製アンプでも、音が響き渡ることはなく、演奏もまともにできない。それなのにファンは熱狂する。サーカスの見世物のようになってしまった自分たちを哀れに思い、ビートルズはライブ活動をやめることを決めた。

ここからの快進撃もまた凄い。さらなる革命。Rubber Soulあたりから、レノンマッカートニーのソングライティングの才能が大爆発を起こし始める。しかもずっと大噴火状態、マグマ垂れ流しながら何年も。技巧面でも前代未聞のことを次々やって、勢いよくサイケ期に突入。

Tomorrow Never Knowsについてリンゴが話してたの、超良かった。偶然の産物である逆回転ギター。あのハプニングを取り入れようとするジョンのセンスがまず神。ジョージマーティンもメンバーの才能を信じて、ちゃんと然るべきところでゴーサインを出すあたり、やっぱり敏腕プロデューサーすぎるよね。ジョージマーティンのbiopic作ってほしいんだが切実に……

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③あの名盤の誕生

メンバーはビートルズの一員であるにも関わらず、いつしかビートルズというバンドを遠く離れたところから客観視し始めていたのかもね。「他の誰かになりたい」という思いから生まれた世界初のコンセプトアルバム、Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band爆誕!!!!!

「めちゃくちゃサイケでアバンギャルドなことやっちゃうけど、これビートルズじゃないから!架空のバンドだから!」と保険かけてリリースしてみたら大ヒット。全世界で3年連続チャート入りとか意味不明。この後の4年間で5枚のアルバム出してるの、なんなんですか?さすがにバケモンですよね…?


Get Back観る前のいい予習になった!
しばらく初期の楽曲贔屓になりそうな予感!
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