violet

博士と狂人のvioletのレビュー・感想・評価

博士と狂人(2018年製作の映画)
-


どちらが博士で、どちらが狂人か


ゼミにて📚
オックスフォード英語辞典(OED)編纂のバックグラウンドを描いた作品。重厚で取っ付き難い雰囲気の映画だけど、これを観なきゃ一生知らなかったであろうことを知れたので良かったです。

編集主幹のジェームズマレーは、学士号をもたない学者。いっぽう精神疾患に苦しむウィリアムマイナーは、元軍医のエリート。どちらがprofessorでどちらがmadmanなのか…… どちらとも取れるみたいなところにドラマ性があって面白い。

軍医時代のトラウマによって幻覚症状に苛まれ、誤って人を殺めてしまったマイナー。鬼気迫るショーンペンの演技が凄かった。かなりの時間、マイナーの贖罪にスポットライトが当たっていたような気がするけど、辞書編纂の過程をもうちょっと詳しく見たかったかなああ〜て感じ。

公募で集めた膨大な数の単語カードは、アルファベット別に引き出しにしまわれ、整理されていたらしい。インターネットもコンピューターもない時代に、この世の語彙を手当り次第に掻き集め、定義と複数の出典をまとめ上げるだなんて狂気じみてる… だけどそんな過酷に思われる作業も、言語オタクのマレーにとってはロマンそのものだったんだね。


「この上なく勤勉な人生を」
violet

violet