回想シーンでご飯3杯いける

最強のふたりの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

最強のふたり(2011年製作の映画)
4.0
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8年ぶりの再鑑賞。これをきっかけに、障害者や難病患者を題材にした映画のイメージが大きく変わったと思う。それまでの難病ものと言えば、余命宣告等の泣かせる映画ばかりで、障害者の場合も苦労や辛さを前提にしたものが多かったが、この「最強のふたり」はとにかく明るい。

本作以降、「きっと、星のせいじゃない。」「50/50」「世界にひとつのプレイブック」「シンプル・シモン」等、新しいタイプの難病映画が次々と生れた。それまでは不謹慎という批判を避けるためだったのか、シリアスな作風が多いジャンルだったが、この「最強のふたり」はコメディ色が強いのが特徴で、敢えて「不謹慎」に立ち向かっているように思えるのがフランス映画らしい。そこから導き出されるのは、健常者同様、いや、それ以上に人生を謳歌する主人公の前向きな生き方だ。実際の医療や福祉の現場とのギャップもあるだろうが、映画表現に於ける可能性を考えた時に、本作が示した方向性はとても大きな転換だったと思う。

何と言っても、アース・ウィンド・アンド・ファイアーをカーステレオで掛けながら夜のパリをドライブする冒頭のシーンが出色。介護者として雇われる貧困層の移民青年との対照的なコンビが生み出す、笑いあり、涙あり、友情ありのストーリー。助ける側と、助けられる側に、きっぱり分かれていない人物配置が素晴らしい。

同じくフランスで製作された「パリ、嘘つきな恋」(2018年)も車椅子が登場する映画で、本作に匹敵する素晴らしい作品なので、強くお勧めしたい。