「ありがとう…ごめんね」
ある夫婦の穏やかな晩年とそのための凶気、そして生きがいを奪われた男の静かな再出発。
最初こそ殺伐としていたが夫婦の旅路が始まってからは基本的に穏やか。
そして全体的になんだそれみたいな場面がちょいちょい入り集中が途切れるというか緊張感が緩む。
と思ったら凶気が差し込まれ、再び穏やかな世界へと戻る。
これが西という人物ということなのだろう。凶暴な側面と穏やかな側面がくるくると回りながら生きてきた。
その穏やかさの支えとなっていた妻がいなくなったとき彼はどうなるのか。
すべてを失いつつもまた生きがいを見つけだして動き始めた堀部とはそこが違う気がする。
最後の描写は妻と共に消える道を選んだのかよく分からないが、ソナチネでもあった今にも消えてしまいそうな主人公の描写は悲しげだが消えたときしっくり来るのも不思議である。