けーはち

HANA-BIのけーはちのレビュー・感想・評価

HANA-BI(1997年製作の映画)
4.0
北野武と大杉漣の演じる二人の暴力刑事。かたや難病の妻の治療費で莫大な借金を抱え虚構性の高い銀行強盗で荒稼ぎ最期の夫婦の旅路へ……かたや銃撃で下肢不随、すべてを捨てて孤独に絵を描き続け……。

芸人・ビートたけし、映画作家・北野武──分裂した監督自身を二人の主人公に託し綴る私小説の様相。叙情と暴力、ユーモアと殺伐が同居するのはもちろんだが、TV番組みたいにクドく叙情を煽りたてる久石譲のBGM演出が唐突に途切れる無音、「キタノブルー」と海の環境音。これはTVの人気者だった自分を自嘲してワザとやっているんだろうか。軽薄な虚構で稼ぐお笑い芸人は心底では愛に殉じる男でありたかったのだろうか(まあ現実には愛人との間に子どもも作ってるんですけど)。いや、お笑いだと思ってた人からこんな映画が飛び出したらびっくりするよね。ヴェネツィア映画祭で金獅子賞もうなずける、良質の一作。

タイトルの語源は劇中ヤクザ共から奪った銃弾を焚き火にくべると点火して花火のような破裂音を立てる瞬間からだろう。危ないから良い子はマネしないでね。