ジジイ

山猫のジジイのレビュー・感想・評価

山猫(1963年製作の映画)
4.3
ルキノヴィスコンティ1963年の作品。19世紀のシチリアはスペインのブルボン家に支配されていたが、ガリバルディ率いる赤シャツ隊がイタリア独立を目指し首都パレルモで王朝軍との衝突が起こる。そんな不安定な時代を生きるシチリアの公爵一族の物語。ヴィスコンティの映画の中でも最も巨額の製作費が投じられているという、どこをどう切り取っても上質な絵画のような美しい画力にひたすら圧倒される3時間。冒頭から流暢なイタリア語を話すバートランカスターとアランドロンに驚いていたら、さすがに吹き替えと気づいてまた驚いた。撮影に36日もかかったという、1時間にも及ぶ舞踏会のシーンは圧巻。キャストの3分の1が実際のシチリア貴族の末裔らしく、作りものという感じが全くしないことに驚愕した。件の二人の舞踏シーンが凄すぎて、ああ監督はこれが撮りたかったのだなぁと感じた。貴族社会の終わりの始まりを予感しながら、静かにその運命を受け入れ決して抗わない公爵の背中に、監督自身にも通じる「滅びの美学」とでもいうべき深いペシミズムを見た気がした。4K修復版で観るシチリアの風景が超絶美しい。コッポラの画作りに与えた影響も大きいのではないか。
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