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善き人のためのソナタのleylaのレビュー・感想・評価

善き人のためのソナタ(2006年製作の映画)
3.9
芸術に心動かされ、大切なことに目覚めるドイツ人の話でした。

皆さん高スコアの今作、勝手に戦争の話だと思い込んでいたらベルリンの壁が崩壊する少し前だった。ナチスドイスの流れを汲むような秘密警察が、80年代でもまだ存在していたとは。地味だけど良質な人間ドラマでした。邦題も良き。

東ドイツの秘密警察局員で、反体制の疑いのある劇作家を監視するヴィースラー。劇作家とその恋人の女優を盗聴するうちに彼らの考えに共鳴していく。そのフックとなるのがピアノソナタ「善き人のためのソナタ」で、芸術というものの崇高さを表現した素晴らしい1シーンでした。盗聴する女優への恋心も少しはあったのだろうか、安っぽい娼婦との行為が彼の孤独を物語る。いつの時代も上層部の身勝手さにはウンザリします。

自分は誰のために何をしているのかを問い、正しい行動をとるヴィースラー。正義を貫いたことで仕事を失い貧乏になったとしても、彼の心は貧しくはなく豊かだった。ラストの自信に溢れた言葉と表情でそれが伝わりました。

「ヴェートヴェンの『熱情ソナタ』を聴くと
革命が達成できない。
『善き人のためのソナタ』を本気で聴いた者は
悪人になれない。」

仕事一筋で生きてます!って見た目の地味で真面目なオッチャンが涙を流す姿にはグッとくる。そして芸術家たちの真っ直ぐな信念にも感動しました。
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