2007年アカデミー外国語映画賞受賞作。
80年代の東ドイツ、社会主義体制下の監視システムの中、反体制思想の疑いをかけられると厳しい尋問が待っている。
ある劇作家と女優カップルの監視作戦担当となった、凄腕の尋問官でもある共産党員の男。彼らの盗聴を続けていくうち、男の中で何かが変わり始める…
映画自体は、派手さはなく淡々と進んでいく。しかしラスト数分の後日談部分、中でも最後の最後、ラストシーンと台詞で、ブワッとこみ上げてくるものが…泣。
このラストシーンのために、それまでの138分があったんじゃないかってくらい。あーこのラストほんと好き!
同じ国の国民同士で互いに疑い合う、とても窮屈な社会。権力者は身勝手で、弱い立場の女性が犠牲になる。
そんな遣る瀬無い社会の表層の下で、芸術は輝き、言論は死なず、愛は優しい。人間は、本人たちも思いもよらないところで、静かに影響を与え合っている。「善き人のためのソナタ」が受け継がれていく。美しい映画だった。