このレビューはネタバレを含みます
あまりにも良すぎた。
良くてきめ細かい布石回収がさり気なく自然に行われて気持ちがいいし、不器用でもどかしくてリアルな人間模様を描いた脚本はあまりにも秀逸。
23歳で書いて29歳で初監督した作品と知って驚愕したが、ハリーポッターシリーズの脚本も手掛けているらしく、なるほどただの天才か、と納得。
邦題は ”恋の行方″だけど、友情に近い兄弟愛や、アーティストとしての人生観の方が主軸。
途中まではよくある音楽映画な気がしていたけど、会話と音楽が心地よく、布石回収がいちいちぐっとくるしで、どんどん引き込まれていく。共感できる心理描写が本当にうまいと思う。
ラストの、昔一緒に練習したのであろう小さなピアノで行う兄弟セッションはあまりに泣けすぎる。
最後の、また会える?会えるさ。は、冒頭のシーンでワンナイトの女性との会話 また会える?いや、会わない。に応答してるし、勘だよ。もオーディションの時の出会い頭のセリフだしで、
丁寧に配置された布石が当時をフラッシュバックさせてくれるからエモい気持ちになる。
バンドや仲間が長くやっていくのは本当に難しいことで、最高のステージができたあの一夜がどんなに尊い時間だったかを思うと胸がいたい。
恋愛と似て、どうしようもなくすれ違っていき元には戻せない人間関係があまりに切ない。
自戒も込めて、何度でも観たくなる作品。