Keny

日の名残りのKenyのレビュー・感想・評価

日の名残り(1993年製作の映画)
4.5
お上手でした。実に。すべて。
原作も、脚本も、演出も、俳優も。イギリス景の映し方も。なんて調和だ。

霧立ちこめ、濃厚で青々とした緑がしっとりとした湿度で包むのは、我々の眼球だけでなく、人々の内情の静かなる重大な変化よね。外面で抑えた葛藤といいますか。

あなたたちはアマチュアだという米国産スーパーマンとそれこそが我々の「名誉」だと宣う欧州貴族。そして傍観者の執事。ナチスへと傾倒するアマチュアを支えたのもまた名誉なのか過ちなのか。執事の務めとは。国民の務めとは。そこには都合のいい善意も見え隠れする。

執事はワインを落とし、しかし、なおも大雨の中で顔色を変えることはないのである。隠すことは美学さ。中身の渦を見逃すなかれ。
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