LEONkei

さらば映画の友よ インディアンサマーのLEONkeiのレビュー・感想・評価

3.3
『キャーンヌだよ!キャンヌ!、キャンヌ映画祭でゴダール君が…』

1968年学生と機動隊が激しく衝突し、府中では三億円強奪事件が起き、キング牧師、ロバート・ケネディ大統領暗殺事件、ベトナム戦争の激化、フランスの五月革命…、激動の60年代に背を向け男は静かに暗闇で『肉弾』を観て〝高倉健〟の様に肩で風を切り〝ジーン・ケリー〟の様に雨で唄う。

最低でも1日1本365日20年間映画館で映画を観続け多幸感に満ちる男の生き様は一期一会を大切にし、頭のテッペンから爪先まで映画が詰まった静岡県は沼津での些細な出来事。

その出来事も他人から見れば些細かも知れないが映画愛に溢れるオジサンと映画マニアの青年はある意味最強のふたり、ほんわかした楽しい映画となれば良かったのだが…、ぼくの大切なともだちの為ならオジサンは天国と地獄の階段をのぼりはじめる。

若干雑な作りに観えるが初監督〝原田眞人〟の映画に対する情熱は伝わる自伝的作品、どの監督にも言えることだが初期作品が荒々しくも世俗に塗れてないから面白い。

不思議なカフェのマスター〝室田日出男〟、悪名高い冷淡なヤクザ〝石橋蓮司〟、初々しい〝浅野温子〟にめまいがする、他脇役陣も個性的で良く全てを脇役俳優の塊で作った作品だから新鮮味がある。

特別出演〝原田芳雄〟の『キャーンヌだよ!キャンヌ!、キャンヌ映画祭でゴダール君が…』と吐く台詞は微笑ましく苦笑いする。

時代性は世代観によってリアルタイムで観てきた作品が全く違うので価値観の共有を得ることは不可能で、例え古い作品を今観ても時代性が異なれば映画の本質から外れてしまうのは致し方ない。

数々の映画に対するオマージュは各シーンや台詞に込められているが、元を知らなければ単なるワンシーンに過ぎないのがこう言った作品の泣所。

タイトルだけで中には武者震いする人もいるだろう。

映画に限らず何かに夢中になることは素晴らしい事だが、現実から大脱走し破滅的になっては悲しいではないか。

映画を優先するか女を優先するかとなれば、自分は迷わず女を優先する..★,
LEONkei

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