ダンクシー

スパイダーマン3のダンクシーのレビュー・感想・評価

スパイダーマン3(2007年製作の映画)
3.8
「君と話しに来た」
「何の匂い?」
「"ナイス・ガイ"っていうコロン。きみのは?」
「"帰れ!"って香水」

スパイダーマン、グリーンゴブリン、サンドマン、ヴェノム。あまりにもてんこ盛りで笑った。要素が多すぎるし、お腹いっぱいです。だからそれぞれ描き足りない部分が多く見受けられた印象。でも、うまくまとめてたね。サンドマンのCGもスゴすぎる。
スタン・リーも出てて興奮した。あと、1・2から思ってたけどやっぱりMJに魅力を全然感じないなー。

誰しもの心に存在する"悪"の感情。それにフィーチャーして、各キャラの復讐心がぶつかり合う。相手に対する憎しみと相手をゆるすことの2つがメインだったと思う。どんな人間であれ、人は誰しも一度は過ちを犯すもの。本音と真実を受け止めて、ゆるすことができるのか。復讐も、敵を倒すことも良くないとかダメとかは思わないけど、ゆるすことは大事だよね。身体ではなく、精神が強くなければゆるすことはできない。

「高校では守ってやったがブチのめす」

【負の連鎖(憎しみ)】
ピーターはベンおじさんを殺したサンドマン(フリント)へ。ハリーは愛する父親を殺した(思い込み)スパイダーマン(ピーター)へ。フリントは自分を邪魔し理解しない社会へ。エディは自分をクビにして挙句恋人を奪ったピーターへ。
【犯した過ち】
ピーターはMJの前で他の女とキスしたり踊って嫌がらせをする。
MJは自分がブロードウェイをクビになったストレスやショックを全てピーターにぶつけて、ハリーの元を訪れキスをする。
ハリーはMJを脅して別れさせ、ピーターに嫌味を言って怒らせる。
フリントは病気の娘を助ける一心で大金を盗みベンおじさんを殺してしまう。
エディはスパイダーマンの写真を加工して嘘をつき成り上がろうとする。

そして、ここからの変化が注目すべき箇所である。嘘偽りなく向き合って、自分の非を認め、相手のことを理解して、ゆるしあう。これは簡単そうに見えて中々できない、難しいことだ。だからこそ多くの観客の心に響いたのではないだろうか。
アクションのみの面白さだけではないのがスパイダーマン。善悪の狭間で葛藤しながら成長していく。今作ではブラックスパイダーマンになり少しずつ悪に染っていく。悪からの逸脱過程も本作の魅力の一つだ。

「選ぶ道で自分が決まる。正しい道は必ず見つかる」

まあでも、よく考えたらピーターもMJもハリーも、全員幼いしロクでもないよね。でもコレってヒーロー映画じゃあんま無いと思うんですよ。サム・ライミ版は、すごく人間らしいというか。ヒーロー映画で人間味をしっかり描くのってダサいしカッコ良さが半減するからやらないんだけど、コッチはヒーローだって人間だってスタンスで心理状態をリアル志向に描いているからそこで他の作品と差別化できている。
力を手に入れたらその力で嫌がらせしたり、チヤホヤされたら調子乗って他の女とイチャついたり、自分の気持ちを理解してくれなかったらブチギレたり、他の男にすぐに気持ちがぐらついたり、今までの関係性が破綻するような言動をしたり、お金のために偽造したり…。
男も女も、それぞれ愚かな部分がある。人生はそう簡単にうまくはいかない。自分がうまくいかない時に、ヤケになって相手に当たったり人のせいにしてはいけない。そういうメッセージもあると思う。

そして、華々しくカッコよく終わらないのも特徴。少し切ない、新たな哀しみをピーターに背負わせるラストに、このシリーズ独特の重さと深さを感じます。


p.s編集長の薬飲むくだり爆笑したな〜。あーいう海外らしい笑い好き。
ダンクシー

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